ポートレイトを中心に、広告や雑誌、写真集など幅広い分野で活躍する写真家の桑島智輝。2019年には、妻である女優の安達祐実を被写体に、15年から19年までの日々をとらえた写真集『我我(ガガ)』(青幻舎)を刊行。女優としての安達のイメージから遠く離れた、「夫婦愛」と一言では言い表せない我と我のぶつかり合いのような写真の数々は、見る者に衝撃を与えた。
その桑島の個展「前我我後」が、東京の渋谷PARCO内・GALLERY Xで開催中だ。会期は7月12日まで。本展では、展覧会タイトル通り、『我我』撮影期間中の未発表作品と、同書の撮影前後の日々を追加した、419点の写真を通覧できる。
「俳優」という被写体としてこの上なく強固なイメージに抗うように、剥き出しの人間性を引き出す桑島。人と人との関わりや、コミュニケーションについて考えを深めるべき今日に、必要な写真展と言えるだろう。