秋吉風人と田中和人の2人展「あれか、これか」をチェック。制作の歴史を自ら解体する新境地的作品とは

秋吉風人と田中和人の2人展「あれか、これか」が、東京・駒込のKAYOKOYUKIで開催される。会期は7月4日〜8月2日。

秋吉風人 13. 19 / 14. 19 2019

 秋吉風人と田中和人の2人展「あれか、これか」が、東京・駒込のKAYOKOYUKIで開催される。本展は、秋吉と田中の近作で構成したもの。会期は7月4日〜8月2日。 

 秋吉は、大阪、ベルリン、愛知と拠点を移しながら国内外で作品を発表してきた。描く行為への執着とともに「絵画」という概念の解体と再構築を実験的に続け、複数の絵画シリーズを展開する。主な作品に、色というよりもむしろ現象に近いような金の絵具で空間が構成される《Room》や、絵画制作に最小限必要である一枚の板と絵具だけを使用し、絵具を積み上げることで絵画と彫刻の境界を交差する《A certain aspect(mountain)》、絵画制作のためにつくられたあらゆる道具を駆使し、それらから生まれる様々なテクスチャーによって構成した《something too much》などが挙げられる。

 いっぽう田中は、明治大学商学部卒業後、会社勤務を経て渡米。04年にニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業した。写真による抽象表現を探求する作品を国内外で発表するなか、京都を拠点とするアーティスト・ラン・スペース「soda」のディレクターを務め、展覧会の企画も手がける。

秋吉風人 3. 19 / 4. 18 2019

 本展に展示される秋吉の作品は、2枚つなぎのキャンバスに絵を描き、複数点完成したところで分解。さらにその2分の1を、別の2分の1とつなぎあわせることで、新たに2枚つなぎのキャンバスに仕立てるというギミックが効いたシリーズだ。そこには、主語としての絵画の独立性・単一性を引き裂き、絵画の集団性・社会性が現出する。秋吉は、本作が社会における人間の存在のメタファーにもなり、また個人と個人、個人と社会の関係性を映し出すことを狙う。

 田中の作品は、抽象絵画の歴史を視野に入れて描いたペインティングの上に、様々な色に露光した写真(印画紙)を貼ることで構成される「PP」シリーズを展示。その構成は、繊細な印画作業による「写真」と即興性を帯びた「絵画」を、それぞれのメディウムやプロセスを維持しながら、ひとつのイメージへと統合させたもの。両者が逆転と回復を繰り返し、同時に互いを解体していく変態を見ることができる作品だ。

 秋吉は、これまでルールや偶発性の導入、多様な技法の混合、制作過程の可視化、物質性の強調といった手法を用いながら、絵画を絵画たらしめるものとは何かを問い続けてきた。そして絵画と写真の関係性を軸に、様々な角度から写真による新しい抽象表現の可能性を試みる田中の作品には、「絵画を見る」という経験を写真によって認識するという姿勢が貫かれている。​

田中和人 PP #15 2020

​ 両者ともに、近年の作品には「1枚の絵画」という概念の完全性・独立性を解体し、不完全なもの、遍在的で複数的なものへと切り開いていこうとする意思が読み取れる。

 二人の制作の歴史を考えたとき、本展の展示作品は、その歴史を自ら解体するという点で重要な意味を持つだろう。「絵画」とは何か?「写真」とは何か? 根源的な問題をつねに問い続ける新境地に期待したい。

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