現代アーティストからロボット研究者、それを支える人々まで、障害や加齢に伴う困難さと向き合い、またそれに注目しながら日々制作を続ける11組を紹介する「ライフ 生きることは、表現すること」展が、熊本市現代美術館で開催される。会期は4月11日~6月14日(予定)。
本展は、アール・ブリュットのアーティストの作品からスタート。養護学校の小学部・中学部のとき、同館の開館記念展に切り紙作品を出品して以来制作を続ける藤岡祐機と渡邊義紘、建物や宇宙などの細密な色鉛筆画を描き、2015年には「VOCA展」に出品を果たした松本寛庸。熊本で制作するこの3人の日々を、大量の作品や周囲の人々の声を交えて紹介する。
また、大山清長、森繁美、木下今朝義ら「ハンセン病療養所菊池恵楓園絵画クラブ金陽会」の作品にもフォーカス。故郷や家族と離れる悲しみや、偏見・差別と切り離すことのできないそれぞれの人生のあり方など、一見素朴に見える絵画の背景を浮かび上がらせる。
続く章では、身体をかたどった手縫いのオブジェや立体作品、装飾を施した義足を使用したセルフポートレイトなどを制作する片山真理の《you’re mine #001》(2014)から新作までを展観。生まれつき目の不自由な人々に「美のイメージとは何か」を尋ね、その対話を写真と言葉で表現するソフィ・カルの《盲目の人々》(1986)も見ることができる。
そのほかにも本展には、思わず人が手を貸してしまうような「弱いロボット」を開発する豊橋技術科学大学のICD-LAB、ユーモアあふれる写真を発表する「自撮りおばあちゃん」として知られる西本喜美子、双極性障害と付き合いながら絵画や料理など多彩な創作活動を行い、自身の携帯番号を公開して死にたい人からの「いのっちの電話」を受け続ける坂口恭平が参加する。
超高齢化社会を迎え、誰もがいずれ身体的・精神的な弱者になりうる現代の日本。自らが「少数派」になったとき、私たちはどのような態度、生き方を選ぶのか。多様な作品群が並ぶ本展は、こうした問いに改めて向き合う機会となるだろう。