写真家・アバロス村野敦子の個展「Fossa Magna - 彼らの露頭と堆積」が、東京・恵比寿のPOSTで開催されている(~3月29日)。アバロス村野敦子は、2017年度キヤノンマーケティングジャパン主催の写真家オーディション「SHINES」にて、造本家の町口覚によって選出。その後2年の制作期間を経て、町口の編集と造本設計のもと自身の写真集を完成させた。
日本列島の本州中央部を横断している地溝帯「フォッサマグナ」を中心テーマに据えた同書は、その地溝帯を発見したドイツ人地質学者のエドムント・ナウマン、そしてナウマンがフォッサマグナを発見した際のエピソードに心惹かれ、リサーチと撮影を行ったアバロス村野敦子、そしてアバロス村野敦子の夫アバロス・ カルロが書いたテキストを含む。これら3つの要素が重なり合う、多層的な魅力を持つ写真集だ。本展はこの写真集の出版記念展として、同書の世界観を立体的に表現したもの。本展の開催にあわせて、仕様が変更された同書も販売されている。
アバロス村野敦子の芸術的実践は、「人々が人生で出くわす様々な出来事」に着目することから始まる。おもに自身が実際に体験したり見聞した出来事をもとに、ドキュメンタリー的手法を用いながらオリジナルの作品世界を立ち上げてきた。複数の写真、そしてときに学術的著述や散文的なテキストが差し込まれることによって生み出されるその表現は、ひとつの作品としてコンセプトを的確に訴求する。
やがて自らが暮らす東京での日常に目を向けるに至ったアバロス村野敦子。地殻変動による隆起、海底火山の噴火、噴火物の堆積によって溝が埋められ、ついにはその陸地がふたつの分断された土地をつなげるなど、数多の過程を経てきた東京という地で、これからも人々の生活は続き、同時に耐えることなく地殻変動もなされていく。アバロス村野敦子は、こうして日々立ち現れるイメージを「露頭」に、積み上がっていくものを「堆積」ととらえ、層を成すように作品制作を重ねる。