「北欧のフェルメール」の名品が多数来日。「ハマスホイとデンマーク絵画」(東京都美術館)
デンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864〜1916)の日本で12年ぶりの展覧会が、1月21日に上野の東京都美術館で開幕した。
「室内画の画家」として広く知られているハマスホイ。しかし、画業の初期には肖像画や風景画にも意欲的に取り組んでいた。本展では、主にハマスホイが描いたその3ジャンルの作品が紹介されている。
会場では、本展の珠玉とも言える《背を向けた若い女性のいる室内》(1903-04)に注目したい。その清澄な空気を会場で体感することができるうえに、作品に描かれている、ハマスホイが所有していたパンチボウルと銀色のトレイも展示。同じ空間に展示されるのは、ハマスホイが作品を描いて以来初となる。
以下のようなハマスホイの言葉も会場には並ぶ。「私はかねてより、古い部屋には、たとえそこに誰もいなかったとしても、独特の美しさがあると思っています。あるいは、まさに誰もいないときこそ、それは美しいのかもしれません」。その詩情と同時代の画家の画業を、ぜひ会場で目撃してほしい。
会期:2020年1月21日〜3月26日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
開室時間:9:30〜17:30(金・2月19日・3月18日〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休室日:月(2月24日・3月23日は除く)、2月25日
料金:一般 1600円 / 大学・専門学校生 1300円 / 高校生 800円 / 65歳以上 1000円 / 中学生以下無料
「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」(原美術館)
名画や映画の登場人物、歴史上の人物に自らが扮するセルフ・ポートレイト作品で知られる森村泰昌。本展は、2018年の個展「Yasumasa Morimura: Ego Obscura」(ジャパン・ソサエティー、ニューヨーク)の凱旋展に位置づけられる。
今回のために再編集された映像作品《エゴオブスクラ》には、日本人の記憶に深く刻まれている昭和天皇とダグラス・マッカーサー、そしてマリリン・モンローや三島由紀夫らに扮した森村が登場する。戦後、以前の教えが否定された日本人に広がった「空虚」と、それを埋めた西洋の価値観。その時代に教育を受けた経験から、森村は「真理や価値や思想というものは(中略)いくらでも自由に着替えることができるのだ」という発想に至り、セルフ・ポートレイトというかたちで「さまよえるニッポンの私とは何か」という命題に挑む。
戦後日本の復興を印象づけた東京オリンピックから55年。再び東京でオリンピックが開かれる2020年に、森村が問いかける「私とは何か」の一端に触れることができる展覧会だ。
会期:2020年1⽉25⽇〜4⽉12⽇
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川4-7-25
電話番号:03-3445-0651
開館時間:11:00〜17:00(⽔〜20:00) ※⼊館は閉館の30分前まで
休館日:⽉(祝⽇の場合は翌平⽇)
料金:⼀般 1100円 / ⼤学・高校⽣ 700円 / 70歳以上 550円 / ⼩・中学⽣ 500円 ※映像作品の上映は入替制を予定。詳細は公式ウェブサイトを参照
「奈良原一高のスペイン」(世田谷美術館)
2020年1月19日、心不全のため死去した日本を代表する写真家・奈良原一高。奈良原の仕事のなかでも、これまでほぼ取り上げられることのなかった1960年代のシリーズ「スペイン 偉大なる午後」に焦点を当てた展覧会が、26日に閉幕する。
本展では、奈良原のスペインの闘牛場に通う濃密な日々をまとめた写真集、『ヨーロッパ・静止した時間』(1967)と『スペイン 偉大なる午後』(1969)に焦点を当てる。牛追い祭りとして知られるサン・フェルミン祭の熱気をそのまま写し留めたような「祭り」、自らの車でスペインを踏破した奈良原がとらえた人々の暮らしからなる「町から村へ」、そして奈良原が最もこだわった「舞い」のイメージによる「闘牛」の3章で構成。写真集とは異なる流れによって、奈良原がスペインと出会うプロセスを体感することができる。
自ら「約束の旅」と名付けた道のりの痕跡としての作品群は、人々の生き様への共感、そして歴史、文学、美術をめぐる思索と創造力に満ちたダイナミックなイメージを伝えてくれる。
会期:2019年11月23日~2020年1月26日
会場:世田谷美術館 1階展示室
住所:世田谷区砧公園1-2
電話番号:03-3415-6011開館時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし祝日の場合は開館、翌平日休館)
料金:一般 1000円 / 65歳以上 800円 / 大学・高校生 800円 / 中・小学生 500円