2020.1.13

写真を制作し続けることとはいかなることか? 武田陽介が京都では初となる個展を開催中

写真家・武田陽介の個展「RAM」が、京都のhakuで開催されている。会期は2020年1月27日まで。

Courtesy Taka Ishii Gallery

 フィルムからデジタルへ、カメラからスマートフォンへ、撮影行為や写真を取り巻く環境が大きな転換に晒される渦中にあって、「写真を制作し続けることとはいかなることか」という根源的な問いに挑み続けてきた写真家の武田陽介。現在その個展「RAM」が、京都のhakuで開催中だ(〜2020年1月27日)。

 武田は1982年愛知県名古屋市生まれ。2005年に同志社大学文学部哲学科を卒業した。大学在学中より銀塩写真での制作活動を始めた武田だが、フィルムや印画紙の生産中止など、従来の銀塩写真の制作が困難になる状況をきっかけにデジタル写真へと移行。印画紙に像を定着させるという行為と、デジタルデータをモニターディスプレイで操作するという行為の間に立ち、メディウムに対する透徹した制作意識を表現してきた。

 近年、「キャンセル」(3331 GALLERY、東京、2012)、「Stay Gold」(タカ・イシイギャラリー、東京、2014)、「Arise」(タカ・イシイギャラリー、東京、2016)と精力的に個展を開催してきた武田。その作品は国内外問わず評価され、サンフランシスコ近代美術館やスペイン銀行、カディスト美術財団などに所蔵されている。

 武田にとって、京都で初めての個展となる本展では、キャリア初期にあたる2006年の京都在住時に撮影された作品から、デジタルカメラを強い光に向けた際に生じる現象をとらえた武田の代表作「Digital Flare」シリーズより、日本未発表作品を含む現在までの写真作品、また近年取り組んでいる映像作品までを展示。

 「Digital Flare」シリーズは、光と影、あるいは偶然性といった写真の基本要素に対する関心を礎に、レンズの痕跡を定着させるという異端な挑戦のもとに展開されてきた。そこではフレアやゴースト、色のにじみ、リング状の光などが象徴的にとらえられている。

 また、水面を写した写真作品から派生したという映像作品では、永遠の象徴である金と、絶えず変化し続けるものを象徴する水面を対比的に撮影。同作では、写真という瞬間の集合体としての映像、あるいはその逆としての写真という円環性を明らかにする。ぬめりのある質感の水が蠢くいっぽうで、たゆたう水面の光は儚く、武田作品特有のアンビバレントな輝きを見出すことができるだろう。