ターナー賞最終候補、ナイーム・モハイエメンの作品を上映。美術教育を模索する倉敷芸術科学大学の試みとは

2013年のジョン・バルデッサリを皮切りに、ジョシュア・オコンやライアン・ガンダー、ミハイル・カリキスなどとコラボレーションしてきた倉敷芸術科学大学芸術学部の川上幸之介研究室。12月20日には、2018年度のターナー賞最終候補として注目を集めたナイーム・モハイエメンの映像作品《United Red Army》(2011)を上映するという。

 

ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011

 倉敷芸術科学大学芸術学部の川上幸之介研究室は、「EEE(Education, Education and Education)」と題した 現代アートプロジェクトを行っている。EEEでは、2013年のジョン・バルデッサリを皮切りに、ジョシュア・オコンやライアン・ガンダー、ミハイル・カリキスなどをピックアップ。

 学生と世界的に著名アーティストによるコラボレーション展や、 キュレーターや美術批評家、 思想家、 社会学者、 哲学者などによる講演会、外部に向けた講演活動、 ワークショップ、 イベントなどを実施してきた。 2015年東京 ・ 西浅草のキュレトリアル ・ スペース 「ASAKUSA」のこけら落とし展からの協働、現在は、 東京大学AMSEA、東京藝術大学と共同プロジェクトを行うなど、 多彩な活動を通じて、 次世代の芸術家を育成することを目指し、 教育によって知性と感性の融合を試みている。

ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011
ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011

 12月20日には、2018年度のターナー賞最終候補として注目を集めたナイーム・モハイエメンの《United Red Army》(2011)の上映会を実施。

 本作は、歴史的資料の調査のうえ、モハイエメン自身が 「超左翼」と呼ぶ物語をもとに制作した「The Young Man Was」シリーズのひとつ。字幕付きのオーディオ・レコーディングやテレビイメージ、歴史資料の上にモハイエメンの個人的な物語がナレーションで重ねられる。

 本作で取り上げられるのは、1977年に起きた、マルクス・レーニン主義を信奉する新左翼系の過激派武装闘争組織「日本赤軍」によるバングラデシュのダッカ日航機ハイジャック事件だ。この事件は、日本政府の超法規的措置による捕虜交換で幕を閉じたが、この間にバングラデシュのマオイスト左派の兵士の大隊が、ジアウル・ラフマンの軍事政権に対するクーデターを企てて空港を襲撃。本作には、その飛行機に乗り合わせた日本人観光客が偶然撮影した歴史的瞬間が織り込まれている。​

ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011
ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011

 モハイエメンは、この事件について「この舞台裏には、ハイジャックが行われている間にバングラデシュ空軍内で試みられた軍事クーデターの秘密の歴史がある。日本人はハイジャックの平和的終結しか知らないが、バングラデシュ側では甚大な二次被害が発生していた」と語る。

 急進的政治運動が交差する特定の領域に介入し、その目撃者であることの意味を問う本作は、見る人の心をいかに動かすだろうか。​

ナイーム・モハイエメン United Red Army 2011

編集部

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