加山又造は1927年京都生まれ。祖父は四條・円山派の絵師、父は西陣の染色図案家という伝統的な芸術家に囲まれた環境で育ち、東京美術大学(現東京藝術大学)を卒業。日本画科として活動をするが、その作品は伝統的な日本画の枠組みに収まらず、様々な手法を用いて革新的な作品を次々に発表した。そうした功績が高く評価され、97年に文化功労賞を受賞、2003年に文化勲章を受章。
加山の作品は国内にとどまらず海外でも高く評価され、90年にはパリ、93年には上海と北京、96年にはロンドン・大英博物館にて個展が開催されるなど、日本を代表する画家として04年に亡くなるまで精力的に活動していた。
その加山又造の作品を、加山本人の原画をはじめ、多彩なクリエイターたちによる多彩な演出で作品を体感できる展覧会が、2018年4月11日より、東京・恵比寿のEBiS303 イベントホールにて始まった。
展示室では、加山本人の言葉を引用しながら、その美学に触れられるような作品を紹介。動物を愛した加山の小さな版画作品から、加山の代名詞ともいえる大きな屏風画など、約30点が並ぶ。
16年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの会場で展示された巨大陶板作品《おぼろ》は、周囲に桜の花びらが舞っているような映像演出で彩られ、幻想的な空間となっている。
また、代表作《春秋波濤》(1966)は、描かれている山ごとに分けられてアクリルに特殊印刷されており、それがレイヤー状になるよう吊るされている。アクリルの間を自由に歩くことで、作品の中に入ることができるという仕掛けだ。
圧巻なのは、《身延山久遠寺天井画 墨龍》と《臨済宗総本山天龍寺 法堂天井画 雲龍図》の原寸大再現展示だ。天井に堂々と展示されているこの作品のメイキング映像も会場で見ることができる。
また、展示の最後には各界のクリエイターたちとのコラボレーション作品を紹介。なかでも注目したいのは、特殊メイクアップアーティストのJIROが歌手で女優の宮城夏鈴の全身にボディペイントを施して制作したという《黒い薔薇の裸婦》の再現だ。実際の作品と、宮城の映像が交互に上映されている。
「伝統と創造」を両立させながら、革新的な作品を作成してきた加山又造。その魅力を体感できる展覧会だ。