2019年5月13日に76歳で逝去した「もの派」を代表する美術家の関根伸夫。今回、その回顧展「関根伸夫 1942-2019」が、神奈川県の鎌倉画廊で開催される。会期は11月9日~12月28日。
多摩美術大学に入学し、斉藤義重や高松次郎に師事。斉藤からは抽象絵画の基礎理論を学び、高松からはイリュージョニスティックな表現の影響を受けた関根。様々な実験を繰り返すなかで、現代美術とは空間認識の問題ではないかと考えるようになり、新しい空間認識法を見つけるため、位相幾何学や相対性理論などの勉強に励んだという。
その後、空間や物体の成り立ち方を認識し明らかにするための制作をスタート。実空間を位相空間的にとらえようと、レリーフ状の平面と立体の間、そして円筒形の作品をつくり、位相空間の現出を試みた。
68年に同大学大学院油画研究科を修了し、同年、神戸須磨離宮公園現代日本野外彫刻展で《位相-大地》を発表。曲げたベニヤ板に蛍光塗料を塗布するなどの加工を施し、見る角度によって凹型や凸型に、平面的にも立体的にも見せた一連の作品群は、もの派誕生のきっかけとなった。
同作で世界的に高い評価を受け、70年には第35回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表に選出された関根。このほか円筒形のスポンジの上に鉄板を乗せ、重さによって彫刻的に歪ませた作品や、ステンレスの角柱の上に巨大な石を乗せた作品などを発表してきた。近年は、2012年、14年とロサンゼルスのBLUM & POEで個展が開催された。
本展では、そんな関根の空間認識を探る礎となった初期を代表する「位相」シリーズの《位相No.9》(1968)を中心に、アイデアの源泉である素描の数々や版画なども展示される。