貴重な肉筆の「夢二式美人」に会える。「憧れの欧米への旅 竹久夢二展」が茨城県近代美術館で開催中

抒情的な美人を描き出し、大正時代に一世を風靡した竹久夢二。その貴重な「夢二式美人」の肉筆画やデザインの数々、また晩年の欧米旅行で描いたスケッチを紹介する展覧会「憧れの欧米への旅 竹久夢二展」が、茨城県近代美術館で開催されている。会期は10月27日まで。

竹久夢二 化粧の秋 『婦人グラフ』第1巻第6号(表紙)より 大正13(1924)  木版、紙

 誰しも一度は見覚えのある、大きな目に鼻筋が通った柳腰の女性の姿。こうした叙情的な作品で大正時代に一世を風靡したのが、竹久夢二だ。

 夢二は1884年岡山県生まれ、1901年に上京。早稲田実業学校在学中に投稿したコマ絵が新聞や雑誌に掲載され、挿絵画家として出発。その後も独自の道を歩み、07年以降には印刷媒体を通して「夢二式美人」が一躍評判となる。14年に港屋絵草紙店を開店し、夢二の手がけた封筒や千代紙、版画などを商った。そして31年にアメリカ・ヨーロッパを旅行し33年に帰国、翌年病のため生涯を終えた。

竹久夢二 セノオ楽譜 夢見草 大正10(1921) 石版、紙

 そんな夢二芸術の全貌を紹介する展覧会「憧れの欧米への旅 竹久夢二展」が茨城県近代美術館で開催されている。会期は10月27日まで。

 本展では軸装、屏風装の「夢二式美人」をはじめ、舞妓やモダン・ガール、幼い子供などを描いた貴重な肉筆画を展示。そのほかにも、実際に販売されていた封筒など当時の人々の暮らしを彩ったデザインの数々、書籍や楽譜の装幀などで、幅広い画業を紹介する。

竹久夢二 舞妓舞扇 大正6(1917) 絹本彩色

 またとくに注目したいのは、夢二が長く夢見た末、晩年に実現した欧米旅行中に描かれた作品の数々。夢二はアメリカに1年滞在した後ドイツを拠点にヨーロッパ各地を巡遊し、結婚することまで考えたという少女・ナズモや和服姿の女性、ナチスに迫害されたユダヤ人と思しき女性など、異国の女性たちを多く描いた。なかでもウィーンで制作された《扇をもつ女》(1932-33)は、稀少な油彩作品だ。

 洗練された色使いと斬新な構図で、いまなお強い人気を誇る夢二の作品。本展は「憧れの欧米への旅」を軸に、その世界を紐解く絶好の機会と言えるだろう。

竹久夢二 扇をもつ女 昭和7~8(1932-33) 油彩、板

編集部

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