アメリカの国民的画家として知られるアンドリュー・ワイエス(1917〜2009)。故郷であるペンシルヴェニア州・チャッズフォードと、夏のあいだ暮らした家があったメイン州・クッシングに活動の地を限定し、身近な風景とそれぞれの地で親交を重ねた家族たちの姿を克明に描き続けたことで知られている。
そんなワイエス作品を多く所蔵する丸沼芸術の森のコレクションから、厳選した115点を紹介する展覧会「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」が新潟市美術館で開催される。会期は11月2日~2020年1月19日。
今回展示されるのは、メイン州のオルソン・ハウスを中心に描いた「オルソン・シリーズ」。ワイエスは1939年、後の妻となるベッツィに連れられてこの家を初めて訪ね、以来そこに住むクリスティーナとアルヴァロの姉弟や動物たち、納屋、ブルーベリー畑などを描き続けた。
とくに注目したいのは、ワイエスの代表作として知られる《クリスティーナの世界》(1948)の習作9点。足の不自由な女性・クリスティーナが、誰の助けも借りずに野原を這って家へと進む光景を描いた同作には、ワイエスの観察力の鋭さとモデルへの尊敬の眼差しを見ることができる。
本展は、ワイエスの画業を代表する「オルソン・シリーズ」をまとめて見ることのできる貴重な機会。作品の数々で、画家が30年間見つめ続けたアメリカのひとつの家の物語をたどってみたい。