風刺とユーモアを内包する刺繍作品。青山悟が個展でコンピューターミシンによる新作を発表

刺繍というメディアの枠を拡張させる作品を数々発表してきたアーティスト・青山悟の個展「The Lonely Labourer」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催される。会期は10月2日〜11月2日。

青山悟 The Lonely Labourer 2018−19 (C)AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

 工業用ミシンを用いて、機械と人間のかかわりや、時代によって変化する労働の在り方など、ミシンに纏わる言語を考察しながら刺繍作品を制作する青山悟。今回、その青山の個展「The Lonely Labourer」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーで開催される。会期は10月2日〜11月2日。

 2年ぶりの個展となる本展では、青山にとって初の試みであるコンピューターミシンを用いた作品を発表する。本展のタイトルと同名の作品《The Lonely Labourer》は、コンピューターミシンが、19世紀のアーツアンドクラフツ運動の創始者であり、社会主義者でもあったウィリアム・モリスが書いた手紙の文面を、淡々と刺繍する様子を映像に収めたものだ。

 手紙の中から拾い上げられる「浪費」「個人」「階級」「競争」「利益」「富裕」「労働者」「仕事」などの言葉が、100年以上の時を経てコンピューターによって自動筆記される様子は、機械による仕事を否定したモリスへの皮肉のようでもあり、また人々が直面している労働に纏わる問題とその行方を端的に指摘する予言にも感じうる。

青山悟 News from Nowhere(labour day) 2019 撮影=宮島径
©︎ AOYAMA Satoru, Courtesy of Mizuma Art Gallery

 同作のほか、19世紀のイギリスの実業家で社会改革者であったロバート・オーウェンによる有名なスローガン「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」に着想を得たインスタレーション《8HOURS》や、19世紀のニューヨークで行われた「労働者の日」の風景に、近年世界で起こったデモや活動の旗とともに作家自身の活動のスローガンを謳った旗を加え、さらにインターネットから拾い上げた様々なカルチャーを織り込んだ現代の風刺画といえる《News From Nowhere(Labour Day)》など工業用ミシンによる刺繍作品も展示される。

 本展を通じて、青山は「急速なテクノロジーの進歩とともに変容していく社会のなかで、人間性の在り処、さらに美意識や芸術そのものの在り処はいったいどこにあるのか?」という問いを提示。未来における労働のあり方と、作家本人の制作のこれからについても疑問を投げかける。

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