現代の女性が19世紀にタイムスリップ? 青山悟個展「News From Nowhere」に見る未来への危惧

工業用ミシンを用いた刺繍作品を制作するアーティスト・青山悟が、ミヅマアートギャラリーで「News From Nowhere」を開催する。会期は9月20日〜10月21日。

青山悟 News From Nowhere (Miranda) 2017 ビンテージプリントに刺繍  撮影=宮島径 © AOYAMA Satoru Courtesy Mizuma Art Gallery

 青山悟は1973年東京都生まれ。2001年にシカゴ美術館付属美術大学大学院ファイバー&マテリアルスタディーズ科を修了し、今年17年には「ヨコハマトリエンナーレ 2017」やマレーシアのグループ展「ESCAPE from the SEA」に参加するなど、国内外で幅広く活動している。

 本展では、19世紀ヴィクトリア朝時代のビンテージプリントにドローイングや刺繍を施した新作30点を発表。ファッションやポップ・カルチャーの世界で活躍する現代の女性が当時にタイムスリップしたかのような作品となっている。女性の肖像は、「ジェンダー・スタディーズ」としての一面を持つテキスタイル・アートを学んだ青山にとって重要なテーマの一つだ。

 本展タイトル「News From Nowhere」は、芸術家であり詩人でもあったウィリアム・モリス(1834〜1896)が1890年に書いた小説『News From Nowhere』に由来。19世紀の「私」が22世紀にタイムスリップする内容のこの小説には、社会主義者であったモリスによる、資本主義社会への変容を伴う近代化に対する批判がこめられているという。

 「自分たちが思い描いていた未来へと向う軌道がずれてきているのではないかと感じるようになった」と語る青山。本展に登場するポップアイコンの肖像には、現代とその先にある未来への問題意識が込められている。

 また、11月5日まで開催している「ヨコハマトリエンナーレ 2017」で本展と補完関係にある作品を展示しているので、こちらもあわせて見てみてはいかがだろう。

編集部

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