ヨーロッパや中東では、犬頭人や一角獣といった「驚異」は自然誌の一部として伝えられた。いっぽう東アジアでは、奇怪な現象や異様な物体を説明しようとする人間の心の動きが「怪異」を生み出してきた。
そんな世界各地の人々の想像のなかに息づく驚異・怪異を集めた特別展「驚異と怪異―想像界の生きものたち」が、国立民族学博物館で開催される。
本展では人魚、龍、河童、天狗、狼男など、実在するかもしれないと信じられていた生き物たちにまつわる絵画や彫刻、書籍を展示。第一部では同館が所蔵する民族資料を中心に「想像界の生態系」を検証し、幻獣のミイラや奇獣の動物標本も公開される。
そして第二部では驚異・怪異の文化史をたどり、想像界の生き物たちがどのように認識され、創作のインスピレーションとなってきたのかを探る。ヤン・シュヴァンクマイエルなどのアーティストやマンガ家・五十嵐大介、そして『ファイナル・ファンタジーXV』のゲームデザイナーまで、現代のクリエイターによるクリーチャー制作もあわせて紹介する。
「なぜ人類は不思議な生き物を思い描き、かたちにしてきたのか?」という問いに迫る本展。妖怪やモンスターなど、いまも愛される「異」なるものたちの源泉にある想像/創造の力を感じることができるだろう。