わずか20歳と2ヶ月という若さでこの世を去った画家・関根正二。その過去最大となる回顧展が、福島県立美術館を皮切りに三重県立美術館、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催される。
関根は1899年福島県生まれ、9歳で上京し深川に居を移す。15歳のとき、後に浮世絵師として名を馳せる幼馴染の伊東深水の紹介で印刷会社に勤務。その後オスカー・ワイルドなどの画家に影響を受け、16歳で描いた《死を思ふ日》でデビューを果たす。
美術を学んだ期間の短さに関わらず、卓越した素描力と独特の画風を獲得した関根。19歳のとき、《信仰の悲しみ》《姉弟》《自画像》で第5回二科展の新人賞に相当する樗牛賞を受賞。鮮烈な朱色は「関根のヴァーミリオン」と称され、評価を確立した。しかし翌年6月、絶筆《慰められつゝ悩む》を遺し、病のためその短い生涯を閉じることとなる。
本展では、関根がわずか5年の活動期間のなかで制作した油彩画、水彩素描など約100点を展示するほか、関根が手がけた『文章世界』『太陽』などの雑誌挿絵や書簡の数々も公開。また、二科展で関根の理解者であった有島生馬や同展のライバルと目された東郷青児など、影響関係にあった作家たちとの交流も紐解く。
注目したいのは、1919年に関根の遺作展に出品されて以降行方不明となり、100年ぶりに発見された作品《少女》。あわせて見つかった4点のペン画とともに初公開される。また、2003年に重要文化財に指定された作品《信仰の悲しみ》も見ることができる(展示期間は10月8日〜11月10日)。
100年を経てなお見る者を惹きつけてやまない関根の作品群。本展では、生涯や時代背景を追いながらその世界を堪能することができるだろう。