山本高之は1974年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を修了後イギリスに渡り、ロンドン芸術大学のチェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインでアートを学んだ。
小学校教諭としての経験をもとに、美術館や教育機関などで行われている美術教育を含む広義での「教育」を活動テーマのひとつに据える山本。おもに子供向けワークショップ形式の活動を通して、ワークショップでの成果物や記録映像をもとにしたインスタレーションなどを発表してきた。
山本は「教育にはその時代、その地域の大人たちが思い描く未来像が反映されている」と語り、近年では宮城県をはじめとする東北の民話についてリサーチを行いながら、知識を伝える際に物語が果たす社会的/日常的な役割についても考察を深めている。
17年にはあいちアートラボで個展「山本高之:Children of men」を開催したほか、「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」(森美術館ほか、2014~15)や、「未見の星座」(東京都現代美術館、2015)、コチ=ムジリス・ビエンナーレ(インド、2016)などのグループ展や国際展にも参加。国内外で注目を集めるアーティストだ。
そんな山本の新作を、群馬県のアーツ前橋で開催される「山本高之とアーツ前橋のビヨンド20XX展 未来を考えるための教室」で見ることができる。これまでも同館は「創造的であること」「みんなで共有すること」「対話的であること」の3つをコンセプトに、コレクションや展覧会、地域アートプロジェクト、学校や福祉施設との協働など多岐にわたる活動を行ってきた。
本展は、山本と同館の学芸員が「〈美術〉を通じた学びとは何か」をともに議論し、これからの美術/美術館の役割について考えるもの。本展で発表される山本の新作《ビヨンド2020 道徳と芸術》では、山本が市民とかかわりながら作品制作を行い、SF映画のような世界観のなかで教育と未来の関係性が示されていくという。