2019.7.1

ベッヒャー派を代表するひとり。写真家カンディダ・ヘーファーの代表作から近作までをチェック

トーマス・ルフやアンドレアス・グルスキーとともにベッヒャー派を代表するひとり、カンディダ・ヘーファーの個展「The Large and The Small - The Still and The Moving」が、東京・品川のユカ・ツルノ・ギャラリーで開催されている。会期は8月3日まで。

カンディダ・ヘーファー La Salle Labrouste - La Bibliothèque de l'INHA Paris II 2017 © Candida Höfer / VG Bild-Kunst, Bonn Courtesy of Yuka Tsuruno Gallery

 カンディダ・へーファーは1944年ドイツのエーバースヴァルデ生まれ。73 年からデュッセルドルフ美術アカデミーで映画を学んだのち、76年より同アカデミーでべッヒャー夫妻に師事した。トーマス・ルフとともに、ベッヒャー派のなかでもいち早くカラー写真を取り入れたアーティストとして知られている。

 ドイツにおけるトルコ人移民労働者によってもたらされた都市の移り変わりをとらえようとした初期作品から、建造環境が人に与える影響へと関心を広げていったヘーファー。図書館や宮殿、劇場など文化的象徴とされる豪奢な建築から日常的な建物に至るまで、様々な公共建築の室内空間を、人物がいない状態でその空間の光だけを用いて撮影してきた。

 人物の存在しないイメージは、逆説的に、建築的な意図が生み出す空間の形式や構造、細部、そしてその矛盾や歴史的変化について思いを巡らせ、人々の経験がいかに建築的な環境によって操作されているかを強調するもの。それらのシリーズは幅2メートルにもおよぶ大型写真作品として、これまでフランクフルト現代美術館やニューヨーク近代美術館、ルートヴィヒ美術館などの美術館で作品を展示してきた。

 2002年に「ドクメンタ 11」に参加し、03年にはヴェネチア・ビエンナーレのドイツ館代表をマーティン・キッペンバーガーとともに務めるなど、国際的に高い評価を受けている。

 近年は建築空間をより抽象化した作品を多く手がけるほか、より身近もしくは限定的な被写体を「ダイトランスファー」という現代では希少な技法で現像。従来の大型写真とは異なる方法で写真の色彩や形態、環境にアプローチしている。

 現在、へーファーは、東京・品川のユカ・ツルノ・ギャラリーで個展「The Large and The Small - The Still and The Moving」を開催中。本展では、図書館や劇場などの室内を撮影したへーファーの代表的な作品とともに、近年取り組んでいる抽象的な写真作品とプロジェクション作品を見ることができる。