気象現象を視覚化したのは風景画といわれている。しかし風景画は空間恐怖を克服すると同時に、空間の自由な表象化を固着し、今日の観光化された表象のモデルを提供することともなった。
いっぽうで、風景画の成立とほぼ同じ時期に「コスモグラフィア」という概念が誕生したことは美術においては重視されてこなかった。それは天文学や地理学と美術が交差する機会がほとんどなかったからと考えられている。しかし、望遠鏡などの光学装置と飛行機や宇宙探査機などの飛翔機械の目覚ましい発達によって、かつて風景画が提起した水平的眼差しとは異なる垂直的眼差しが美術に視覚革命ともいうべき事態をもたらした。
そんな風景画やコスモグラフィアに焦点を当てた展覧会「ウェザーリポート 風景からアースワーク、そしてネオ・コスモグラフィア」が栃木県立美術館にて開催される。
本展では風景を成立させる基体としての大気の上層にある光源と地表、そして不可視の光源であるマグマを結ぶ垂直軸と地表的な水平軸の交差における眼差しのダイナミズムから美術における新たな世界画としてのネオ・コスモグラフィアの可能性を探るという内容。
ターナーやカミーユ・コロー、クロード・モネといった風景画の巨匠たちをはじめ、ヨーゼフ・ボイス、ロバート・スミッソンや日高理恵子、鈴木理策、松江泰治、田中功起といった現代の作家たちの様々な作品によって、美術が表現してきた気象現象を見ることができる展覧会だ。