浜田知明が遺した「忘れえぬかたち」。版画や彫刻を「かたち」から読み解く回顧展が熊本県立美術館で開催中

2018年に逝去した、日本の戦後美術を代表する版画家・彫刻家の浜田知明。戦争体験を原点として社会や人間を諷刺する作品の数々を、モチーフや「かたち」に焦点を当てて紹介する回顧展「浜田知明回顧展 忘れえぬかたち」が熊本県立美術館で開催されている。会期は5月26日まで。

浜田知明 風景 1953 熊本県立美術館蔵

 2018年7月、100歳の生涯に幕を閉じた版画家・彫刻家の浜田知明(はまだ・ちめい)。自身の戦争体験を原点としたその活動を総覧する回顧展が、浜田の故郷である熊本県立美術館で開催される。

 浜田は1917年生まれ。39年に東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、中国大陸で軍務につく。5年におよぶ過酷な従軍生活を経て、終戦を迎えたのは27歳のとき。版画家・駒井哲郎らとの交流のなかで50年から本格的な銅版画制作を開始し、「初年兵哀歌」などのシリーズを生み出した。

 戦争と軍隊の不条理に耐え、「戦争の残酷さや悲惨さ、軍隊の野蛮さや愚劣さを描きたい」という意志を抱いた浜田。社会や人間だけでなく、自分自身の弱さや悲しみをも諷刺する表現を続けてきた。

浜田知明 初年兵哀歌(芋虫の兵隊) 1950 熊本県立美術館蔵

 浜田の作品を展示する際には、同時に本人の言葉を紹介してきた同館。しかし本展でスポットを当てるのは浜田の言葉ではなく、作品のモチーフと「かたち」。「反戦の画家」というイメージにとらわれない主題の多様性を明らかにするほか、浜田亡きいま、改めて作品と対峙できるような展示構成を試みる。

 また版画の数々に加えて、浜田による戦時中のスケッチも紹介。従軍した場所や時期と照らし合わせ、創造の源泉である戦争体験の具体的な姿を浮かび上がらせる。本展では、ユーモラスな造形で社会の本質を突きながら、人間への愛を込めた浜田の100年の歩みをたどることができるだろう。

編集部

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