日本におけるメディアアートの先駆者とも言われ、前衛芸術グループ「実験工房」のメンバーとしても活動した山口勝弘が5月2日、敗血症のため90歳で逝去した。
山口勝弘は1928年東京都生まれ。バウハウスの思想に影響を受け、日本大学法学部在学中より独学で作品制作を開始。偏光ガラスを素材に、見る者の視点によってイメージが変化する50年代の「ヴィトリーヌ」シリーズは山口の代表作として知られる。また70年の日本万国博覧会では、三井グループ館の総合プロデューサーを務めた。
こうした個人の活動に加え、51年には詩人・瀧口修造の主導のもと、アーティストの北代省三、福島秀子、音楽家の武満徹、湯浅譲二らと共に「実験工房」として作品を発表。81年には中谷芙二子、松本俊夫らアーティストと共にビデオメディアの新たな可能性を展望した「ビデオひろば」を結成するなど、同時代のアーティストとともに領域横断的な活動を繰り広げた。
また、アーティストのほか筑波大学教授(77〜92年)、神戸芸術工科大学視覚情報デザイン学科教授(92〜99年)として後進の指導にあたり、『パフォーマンス原論』『ロボット・アヴァンギャルド』をはじめ多数の著書も手がけた。
日本でいちはやく最新テクノロジーなどを取り入れた活動を展開したことから、メディアアートの先駆者とも言われる山口。今回の逝去を受けて後日、しのぶ会が開かれる予定だという。
なお、生前最後となった美術館個展「横浜wo発掘suru vol.5 山口勝弘展—水の変容」展(2014年)の企画に携わった学芸員の一人、佐藤直子(横浜市民ギャラリーあざみ野)は「画像を選びながら4年前の展覧会のことや、半年前に先生にお会いしたことなど思い出し、寂しい気持ちですが、晩年も旺盛だった創作意欲の一片を当館での展覧会を通じて記録と記憶に残し、あらためて皆さんにお伝えする一助となることができて光栄です」とのコメントを寄せている。