昨年、アルベルト・ジャコメッティ(1901~66)の彫刻作品《ヤナイハラ Ⅰ》を収蔵した国立国際美術館。これを記念し、同館で「コレクション特集展示 ジャコメッティとⅠ」が開催される。
スイスに生まれフランスで活躍したアルベルト・ジャコメッティは、20世紀を代表する彫刻家のひとり。20年代の終盤からシュルレアリスム運動に参加し、35年頃から身体を細く長く引き伸ばした独自のスタイルによる彫刻作品の制作を始める。
ジャコメッティの創作に多くの刺激を与えたのは、日本の哲学者・矢内原伊作(1918~89)の存在だ。矢内原はサルトルやカミュに惹かれ、実存主義の立場から哲学を研究。56~61年の間に繰り返し渡仏してジャコメッティのモデルを務めたほか、『ジャコメッティとともに』(筑摩書房、1969)など、その交流関係を記した著書も多い。
矢内原をモデルとしたブロンズ彫刻のうち完成に至ったのは2作品のみで、すべての鋳造をあわせても7体しか存在しない。《ヤナイハラ Ⅰ》はこのうちのひとつで、同シリーズが日本国内に収蔵されるのは今回が初となる。
本展ではそのほかにも、同館が2013年に収蔵したジャコメッティによる油彩画《男》(1956)を展示。また日本各地の美術館の所蔵作品から、矢内原がモデルを務める間に書き留めた手帖や、フランスで撮影した写真などを紹介する。
なお、本展の会期後には「コレクション特集展示 ジャコメッティとⅡ」(8月27日~12月8日)の開催も予定。こちらもあわせてチェックしたい。