美術の分野ではグスタフ・クリムトやエゴン・シーレなどが登場し、文化的に興隆をきわめた19世紀末におけるオーストリアの首都・ウィーン。そんな「世紀末ウィーン」のグラフィックに焦点を当てた展覧会が、京都国立近代美術館で開催される。
世紀末ウィーンでグラフィックが花開いた発端は、「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」というモットーを掲げ、クリムトらが中心となって結成された「ウィーン分離派」。本展では彼らの活動を概観するとともに、クリムトやその後継者であるシーレ、オスカー・ココシュカの素描作品も展示される。
それに加え、当時のカラー印刷技術などの発展を背景に刊行され、いまなお新鮮さを失わない図案集の数々も展示。また、多くのデザイナーを輩出したウィーン工芸学校の動きや、『装飾と罪悪』で知られるアドルフ・ロースやオットー・ヴァーグナーなど建築家たちの試みを探る。
そのほかにも、広く人々の生活を彩り、生活を刷新したグラフィック作品も紹介。ポスターやカレンダー、書籍の装丁や挿絵をはじめ、印刷技術の普及に伴い芸術作品としての模索が行われた木版画など、芸術が人々の生活へ浸透していった流れを追う。
本展ではグラフィック作品のほか、リヒャルト・ルクシュによる石膏彫像と、アドルフ・ロースの家具一式も展示。世紀末ウィーンの息吹と魅力を、この機会に楽しみたい。