2018.11.3

ソーシャルメディア時代を批評するペインティングとは? キャスパー・ソンネの日本初個展をチェック

キャンバスや布を組み合わせ、スプレーによるペインティングを施した作品などを発表するデンマーク人アーティスト、キャスパー・ソンネの日本初個展「Body Body Head」が東京・元麻布のKaikai Kiki Galleryで開催中。会期は11月22日まで。

キャスパー・ソンネ HP (kdhhf) 2018 ©️Kasper Sonne Courtesy of Kaikai Kiki Co., Ltd.
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 キャスパー・ソンネは1974年、デンマーク生まれ。2002年から作家としての活動をスタートし、コペンハーゲンをはじめ、ニューヨークやパリ、ロンドンなど世界各地で個展を開催。絵具やキャンバスといった素材に加え、火や化学薬品がもたらす効果などを作品に取り入れる作風で、ここ数年で注目を集めている。

 10代はグラフィティ・アーティストとして活動し、その後ファッションの学校に通ったというソンネ。新作の「HP」シリーズで用いられる布やスプレーペイントは、自身の過去を象徴するようにも見える。

キャスパー・ソンネ HP (mskdn) 2018
©️Kasper Sonne Courtesy of Kaikai Kiki Co., Ltd.

 また、ギャラリーの床には黒いゴムの水たまりが出現。鑑賞者はそれらに行く手を阻まれることで、自らの物理的な存在を強く意識することになる。

 さらに会場には、ビデオ作品《Freedom Is》も展示。見覚えのある文化的なステレオタイプをエンドレスに繰り返す映像は、現代のメディアのとらえ方、そして「自由」の意味に疑問を呈する内容だ。

キャスパー・ソンネ HP (dlsls) 2018 ©️Kasper Sonne Courtesy of Kaikai Kiki Co., Ltd.

 ソンネの作品に通底するのは、作家自身の個人的な歴史の層。そしてその上に、誰もがインターネットの世界へと逃げ込む時代に対する批評を重ねて開催される本展。タイトルの「Body Body Head」は、総合格闘技の戦法が由来だという。ソンネが放つボディーブローで、現代における精神と肉体のあり方について思考をめぐらせたい。