2018.10.28

福岡道雄はいかにして「つくらない彫刻家」になったのか? 個展で約50年の変遷をたどる

1950年代から制作を始め、2005年に「つくらない彫刻家」を宣言した福岡道雄の個展「黒一色の景観から」が、神戸のギャラリーヤマキファインアートで開催される。会期は11月17日~12月22日。

福岡道雄 石を投げる 加速された2.5秒または消去された2.5秒 1971

 福岡道雄は1936年大阪府生まれ。19歳で大阪市立美術研究所に入所し、それを機に彫刻の制作を始める。63年には批評家・中原佑介キュレーションの展覧会「不在の部屋」に参加するなど、当時の「反芸術」の旗手として注目を集めた。

 そしてその後の2005年、最後の個展で《腐ったきんたま》を発表し、「つくらない彫刻家」として生きることを宣言。しかし制作活動に終止符を打っても、福岡の「つくる」と「つくれない」のあいだを揺れ動き、考え続ける姿勢は変わらない。福岡は、いまなお現在進行形で、制作と生活のあいだを探り続けている。

 最近では2014年の「横浜トリエンナーレ」に《何もすることがない》《飛ばねばよかった》などの代表作を出展。また、2017年には大阪・国立国際美術館で大規模回顧展「福岡道雄 つくらない彫刻家」を開催するなど、再評価の機運が高まっている。

 本展は、これまで公開されることのなかった貴重な70年代の写真作品から、「つくらない彫刻家」を宣言した後の2000年代に至るまで、福岡の約50年の表現を紹介する内容。なお本展は、福岡自身が携わる最後の展覧会だという。この機会を逃さず、ぜひ会場に足を運びたい。