衣類の袖をほぐす彫刻的行為から生まれるストーリー。福田尚代が個展「山のあなたの雲と幽霊」で新作を発表

美術家・福田尚代の個展「山のあなたの雲と幽霊」が東京のMUSEE Fで開催される。本展では、福田が近年取り組んでいる「袖の涙」シリーズの新作を見ることができる。会期は10月15日〜10月27日。

福田尚代 Dear Fairy & Fiction 2018 毛糸、刺繍糸、ハンカチ サイズ可変 © Naoyo Fukuda, Courtesy Yukiko Koide Presents

 福田尚代は1967年埼玉県生まれの美術家。92年に東京藝術大学大学院油画専攻を修了した。これまで埼玉県のうらわ美術館で個展「福田尚代—言葉の在り処、その存在」を開催したほか、「MOTアニュアル2014 フラグメント」(東京都現代美術館、2014)、「Reflection:返礼—榎倉康二へ」(秋山画廊・スペース23℃、2015)といったグループ展にも数多く参加してきた。

 ボート、机、立方体、塔をかたどった小さな消しゴムの彫刻や、色鉛筆の芯の粉末などを用いて、繊細かつ物語的な作品を展開してきた福田。今回、東京のMUSEE Fで開催される個展「福田尚代 山のあなたの雲と幽霊」では、近年取り組んできた「裾の涙」シリーズの新作が発表される。

 同シリーズは、古くから和歌に詠まれてきたような、涙が染みこみ、朽ちてゆく「袖」という媒体との共鳴から生み出されたもの。福田は、衣類の袖を綿状にほぐす彫刻的な行為から、「涙」「雲」「幽霊」にまつわる修辞を連想し、その身体感覚に潜む無意識のゆくえに驚きながら制作したという。

福田尚代 氷山 2018 ほぐされた衣類の袖、軟膏のふた © Naoyo Fukuda, courtesy Yukiko Koide Presents

編集部

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