「無意味」のように思える行動やその痕跡に出会うときに、どのような感情を抱くだろうか。「意味があるのだろうか」と考えてしまう行為をしたり、そのような作品を制作する作家による展覧会「無意味、のようなもの」が福島県・はじまりの美術館にて開催される。
展覧会はまず、身近な素材で表現された多様な作品を紹介する。
けうけげんによる、広告の裏に描かれた架空の芸人や、田中偉一郎よる一枚の板をスマートフォンに見立てている作品、平野喜靖が描く言葉や日付などがぎっしりと描かれた作品、福田尚代による薬の錠剤を舟に見立てている作品など、身近な素材を使用した作品はユーモアがありつつ、視点を変えることで見えてくる世界を提示するものだ。
また、行為も作品となりうる。吉田格也は毎日決まったペットボトルを並べ続け、酒井美穂子は何かを制作するわけではなく、一日中サッポロ一番の即席麺が入った袋を握りしめる。酒井の通う施設であるやまなみ工房では、その行為を彼女の表現とし、日付を貼り保管してきたという。本展では、その周囲とのかかわりも含めて生まれた酒井の作品を、意味を揺さぶるものと捉え展示。
そのほか、体験できる展示として、今井さつきの「人間ノリ巻」に参加ができる。この作品は会期中に今井が滞在しているとき、希望するとノリ巻きに巻かれて具材になれるという、体験者がいてはじめて完成する作品だ。
展覧会会期中のカフェスペースには、「こだわり掲示板」が設置される。人から見ると無意味に見られるかもしれない、自分が日頃こだわっていることや、ついやってしまう癖などを来館者が自由に記入し、共有し合うというものだ。自分の中の無意味な行為に向き合うことで、展覧会をより深く楽しめる。
日々の生活にひそむ「無意味さ」を、視点を変えて楽しむことのできる展覧会。イベントも多数予定されており、そちらにも注目したい。