1946年、クリスチャン・ディオールによって創設されたクチュールメゾン「ディオール」は、モダンな女性らしさ強調するオートクチュールを確立。女性の身体を最大限に美しく見せるよう、ウエストをきつく絞るなどシルエットを強調し、布を贅沢に使用したフェミニンかつ華麗なドレスは、質素な生活を余儀なくされていた第二次世界大戦後の疲弊していたパリに活気を与えた。
ディオール自身はクチュリエとして活動し始めてわずか10年ほどで急逝したが、その功績は服飾史上においても確固たる地位を築き、また後任のデザイナーたちの仕事によって現代においても世界中から支持を得ている。2016年からはマリア・グラツィア・キウリがメゾンで初となる女性のアーティスティック・ディレクターとして、また2019年春夏シーズンからはキム・ジョーンズがメンズのクリエイティブ・ディレクターに就任し、毎シーズンのコレクションが注目を集めている。
そんなディオールのメゾン創設70周年を記念した展覧会「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ」展が、2017年にパリの装飾美術館で開催され、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。装飾美術館の展示室すべてを使用し、70万人を超える来場者が詰めかけたという同展が、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(以下V&A)にて2019年2月2日から7月14日まで開催される。
世界中の古美術や美術品だけではなく、服飾史、デザイン史分野のコレクションにおいても世界最大規模を誇るV&A。装飾美術館で開催された展覧会では、クリスチャン・ディオールの幼少期からクチュリエとして成功を収めるまで、そしてディオールのあとを継いだイヴ・サンローランら後世のアーティスティック・ディレクターたちの仕事を網羅的に紹介する内容だったが、V&Aではさらに内容を刷新。ロンドン博物館から貸し出される、マーガレット王女が21歳の誕生日の祝賀会で着用したドレスが特別に展示されるという。
また、アメリカのデンバー美術館では2018年11月19日から2019年3月3日まで、回顧展「ディオール パリから世界へ」が開催。同展では170以上のオートクチュールをはじめ、アクセサリーやジュエリー、写真、ドローイング、ランウェイの映像、そしてアーカイヴ資料が展示される。
戦後のファッション界に革新をもたらし、今なお世界中を魅了し続けるメゾンであるクリスチャン・ディオール。いずれの展覧会においても、70年の歴史がつくり出す濃密で美しい時間を過ごすことができるだろう。