阿部展也(1913〜71)は新潟県生まれの作家。独学で絵画を学び、瀧口修造との詩画集『妖精の距離』(1937)で若くして注目を集める。戦前戦後を通して、前衛、シュルレアリスム、アンフォルメル、幾何学的抽象など様々な表現で作品の発表を続けた。
サンパウロ・ビエンナーレをはじめとする数々の国際展への出品、国際会議への参加など、その活動は国内にとどまらず、晩年にはイタリアへ移住し、作品制作のかたわら、海外の美術動向の紹介にも務めた。
本展では、その多様なキャリアを時期ごとに分け、「出発ー〈妖精の距離〉と前衛写真 1932-1941」「フィリピン従軍と戦後の再出発 1941-1947」「人間像の変容ー下落合のアトリエにて1948-1957」「技法の探求から「かたち」回帰へーエンコースティックを中心に1957-1967」「未完の「越境」1968-1971」の5章構成で紹介。
戦前の貴重な作品を含む阿部の主要作品に加えて、雑誌や写真、下絵などの資料、さらに阿部が日本に紹介した海外作家を含む関連作家の作品を通して、国や地域、そしてジャンルを横断しつづけた「越境者」としての阿部の姿を紹介する。