森村泰昌は、1985年にゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト写真を発表して以来、文化的、社会的、あるいは政治的な文脈で象徴的存在になった人物を、入念に作り込んだ舞台設定あるいは意図的に用意された背景のなかで、「演じる」作品を発表してきた。
90年には「星男」(Cometman)と題する、デュシャンの星形に剃髪した有名なポートレイトをもとにしたシリーズを制作。この作品は、星形に後頭部を剃髪した森村が京都の町を歩き回る様子や、路上で星形に寝転んだパフォーマンスをビデオとスティールで記録したものをもとに展開されたシリーズで、それらは写真、映像作品としてまとめられた。
本展は、この「星男」含む過去の作品から新作まで、パフォーマンスを含め身体の行為を基礎にした森村作品の側面を考察することを試みる。展覧会タイトルと同名の新作《高く、赤い、中心の、行為》は、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之により結成されたハイレッド・センターが64年に東京の路上で行った「第6次ミキサー計画」での、各作家による「行為」を参照したもの。舞台を森村の地元・大阪に移し、森村自身のパフォーマンスをもとに制作された作品だ。
また、同様にパフォーマンスのビデオと写真作品で構成される、60年代暗黒舞踏の運動を率いた大野一雄の《ラ・アルヘンチーナ頌再考》も展示。この作品は、大野一雄がスペインの舞踏家ラ・アルヘンティーナへのオマージュとして踊った代表作である「ラ・アルヘンチーナ頌」を、森村の手によって「再考」した試みだ。
セルフポートレイト写真だけではない、パフォーマンスなどの身体の行為を基礎にした森村作品を考察できる貴重な機会となるだろう。