日本では古くから春の風物詩として愛されてきた桜。詩歌や調度品、衣装の文様、絵画といった数多くのジャンルで見ることのできる桜は、近現代の日本画においても注目され、重要なモチーフであり続けてきた。
一口に桜を主題にした絵画といっても、その表現は多種多様だ。歴史や物語、風俗などをとらえた橋本雅邦、小林古径、上村松園。奥村土牛の《醍醐》や東山魁夷の《春静》では、桜に対する心情までもがその作品に表れる。また、速水御舟《夜桜》をはじめ、桜そのものを描いた作品では、画家の個性や美意識が色濃く反映されている。
本展は、山種美術館所蔵作品から桜が描かれた日本画を厳選。およそ60点の多彩な桜の描写を通して、日本画の表現の幅広さを確認することができる展覧会となるだろう。