キュレーター・長谷川祐子に聞く
──モレスキン財団の「クリエイティビティによる社会変革」という理念は、キュレーションや展示にどのように活かされているのでしょうか?
長谷川祐子(以下、長谷川) モレスキンのノートブックそのものが、それを使う人々の知性や創造性を前提にしていると思います。これは使い捨てにはできない、いつまでも本のように自分の手元においておきたいコンテンツを保存し、結晶化する力があります。
様々なジャンルのクリエイター、アーテイスト、建築家、デザイナー、ライターなども含む人々のこのノートブックへの思いが、展示作品として展開されています。複数のキュレーターが各地でコラボすることによって、展覧会の巡回先のクリエイターの作品が増えていくのもよいシステムだと思います。デコレーション、ストーリー、マケットのように立体として見せる、様々な要素が組み合わされたキュレーションで、ケースも洗練されたデザインで本未満ノートブックのカジュアルさと存在感を展示するには適しています。手袋をつけて、ケースの穴から手をさしいれて一部のノートブックを捲れるようになっている見せ方は、ほかの資料展示にも参考になると思いました。自由につくられたノートブックは、誰もが手にすることのできる一冊のノートブックからこのような多彩なアイデアがでてくることを人々がみることによって、創造的な社会の一員として一歩を踏み出すことを押し出してくれると思います。

──「Detour」展(東京)の見どころについてお教えください。
長谷川 私はアーテイスト2人(名和晃平、清川あさみ)、デザイナー(森永邦彦)、俳優(板垣李光人)、詩人(吉増剛造)といった5人のクリエイターを選びました。いずれもモレスキンのノートブックを敬愛している人であったことはとても印象的でした。伊東豊雄さん、隈研吾さん、西沢立衛さん、妹島和世さんなど日本を代表する建築家たちの個性的なノートから、名和晃平さんや中村哲也さんの強いマテリアルの存在感など、日本ならではの展示になったと思います。板垣李光人さんの鋭い内省空間をあらわしたノートから、モレスキンのノートブックに抱かれた吉増剛造さんによる2重のノートなど、キュレーションもデコレーションでテクニックを見せるものから、イラストや文字によってストーリーをつくるもの、建築空間を展開した空間をなかに含むもの、三宅デザイン事務所のミニマルでオリジナルな展示。展示物の特性にあわせてケースのレイアウトをイタリアのキュレーター、ロッセラ・ザネッラさんと一緒に行いました。
従来のコレクションの大胆で造形性の高いものと、フレッシュな同時代感性をあわせた「Detour」展を、東京、日本の観客の皆様に見ていただきたいと思います。




















