2021.8.24

BOMBAY SAPPHIRE(ボンベイ・サファイア)が刺激するクリエイティビティ、その「かきたてる好奇心」の起源とは? 日高康介×中田嘉生 対談

世界中で愛されているジン「BOMBAY SAPPHIRE(ボンベイ・サファイア)」。そのブランドコンセプトである「かきたてる好奇心」をテーマにジントニックグラスのアートワークを募集する「BOMBAY SAPPHIRE Gin & Tonic Art Glass Competition」が開催されている。この開催に際して、terminal inc.のアートディレクターである中田嘉生が、ボンベイ・サファイアのブランドアンバサダーも担うBACARDI JAPAN・アドボカシーグループの日高康介に、ジンとしての歴史や起源、ブランドに込められたクリエイティブへの想いについて話を聞いた。

聞き手・文=柴田悠 撮影=岡村大輔

左から中田嘉生(terminal Inc.)、日高康介(BACARDI JAPAN)
前へ
次へ

 1761年から続く伝統的なレシピ、世界中から厳選されたボタニカル、そして独自の製法によってつくり出される洗練された味わいと香りが世界中で愛されているジン、「BOMBAY SAPPHIRE(ボンベイ・サファイア)」。ボンベイ・サファイアは、ブランドのコンセプトである“かきたてる好奇心”をテーマにジントニックグラスのアートワークを募集する「BOMBAY SAPPHIRE Gin & Tonic Art Glass Competition」を2021年8月31日まで開催している。

 今回はバカルディジャパン本社のBarスペース「バミューダ」にて、terminal inc.のアートディレクターである中田嘉生が、ボンベイ・サファイアのブランドアンバサダーも担うBACARDI JAPAN・アドボカシーグループの日高康介に、ジンとしての歴史や起源、ブランドに込められたクリエイティブへの想いについて話を聞いた。

※取材・撮影は感染症対策を徹底したうえで実施されました。

ヴィクトリア女王とインドがルーツ? 「ボンベイ・サファイア」の名前とデザインの由来とは

日高 中田さんは普段から、ジンは飲みますか?

中田 はい、飲みますよ。じつは4年前に「Tokyo International BarShow」というイベントでボンベイ・サファイアのパフォーマンスの企画に参加したことがあって、「THE MOMENT GRASS MARBLING」という作品をつくりました。それがきっかけで、ボンベイ・サファイアが事務所に常備されるようになりまして。最近はご時世的にあまり外には飲みにはいけないのですが、事務所のスタッフとジントニックをつくって軽く飲んだりするときもあります。バーテンダーの人がつくってくれるような本格的なものではないですけどね、もっと雑なジントニック(笑)。

日高 そうなんですね。でもこのカクテル、つくるのはわりと簡単ですよ。1対4ぐらいで割ったら大体味が決まってくるんですよね、ジントニックは。

中田 へえ。ちなみに、ライムは入れるだけでだいぶ違うんですか?

日高 全然違いますね。ライムはアクセントとして超重要です。あと、トニックウォーターもモノによっては甘かったりするので、そういうときは炭酸で割ったりすると味が整いますね。

中田 そうなんですね。このBarスペースの雰囲気も相まってか、普段飲んでるものとだいぶ違う気がします。早速「ボンベイ・サファイア」の起源や成り立ちについて話を聞いていきたいのですが、まず「ボンベイ・サファイア」っていう名前の由来はどこから来てるんですか?

左から日高康介(BACARDI JAPAN)、中田嘉生(terminal Inc.)

日高 ボンベイ・サファイアのレシピは、1761年にトーマス・デイキンというイギリス人が開発したのですが、当時はまだボンベイという名前はついてなくて、「ウォーリントン・ジン」っていう名前だったんですね。その後、1960年ぐらいに販売権が移行して、アラン・スビンというアメリカ人の弁護士が販売権を買ったんですけど、彼の奥さんがイギリス人で、イギリスにちなんだ名前をつけようということになった。当時のイギリスはまさに絶頂期、ヴィクトリア女王の時代で、インドも統治してたんですね。で、その栄華の象徴として彼が選んだ言葉が「ボンベイ」。当時イギリスの領土だったインドの街の名前で、今はムンバイと呼ばれていますけど。そして、「ボンベイ・ドライ・ジン」が誕生したと。

中田 ムンバイって、あのインドの都市のムンバイですか?

日高 そうです、ムンバイの前がボンベイという都市名だったんですね。1500年代以降から「ボンベイ」という呼称が普及していましたが、1995年に名称がボンベイからムンバイに変更になるという公式発表がなされました。でもそもそも、ボンベイが使われる前はムンバイという呼称が使われていたようなので、再度ムンバイに戻ったという感じですね。

中田 ああ、そういうことなんですね、なるほど。その呼称の時期にイギリスがインドを統治していたので「ボンベイ」という名前が使われていて、それを今でも引き継いでいると。

日高 例えるなら、薩摩が鹿児島に変わったけど「薩摩焼酎」って呼び名は残っているというような感じですね。

中田 めちゃくちゃわかりやすいです(笑)。

日高 その名残もあって、その頃にイギリスを統治していたヴィクトリア女王がラベルにあしらわれてるわけですね。

ブルーボトルのボンベイ・サファイア プレミアム・ジン。中央のロゴの女性がヴィクトリア女王

中田 あ、これ、ヴィクトリア女王なんだ。それも初めて知りました。

日高 そうなんです。あと名前のもういち部分の「サファイア」ですが、ボンベイ・サファイアのプレミアム・ジンをつくるときに、ちょうどインドで「スター・オブ・ボンベイ」という有名なサファイアがすでにあって、それにちなんでつけられました。ボトルのデザインがブルーになったのは1987年ですね。

中田 1987年ですか。昔からあるビジュアルのイメージでしたが、意外と最近なんですね。

日高 それまでは透明なボトルデザインで売られていて、こちらは2011年ぐらい「ドライ・ジン」として復活しました。このブルーのボトル、ボンベイ・サファイアのスタンダードなボトルだと思ってる人が結構多いんですけど、じつはかなりプレミアムなボトルなんですよ。

中田 そうなんですね、たしかに僕も透明なボトルよりブルーボトルのイメージが強いです。僕が大学生の時にバイトをしてた焼き鳥屋も、ブルーのボトルが置いてあったような気がします。

日高 それは良い焼き鳥屋さんですね(笑)。たしかに最近だと居酒屋でボンベイ・サファイアを見る機会が増えてきてると思いますね。

中田嘉生(terminal Inc.)

10種類のボタニカルと、ボンベイ・サファイア独自の製法「ヴェイパー・インフュージョン」

中田 ボンベイ・サファイアの名前がインドに由来があることはわかりましたが、お酒は実際にムンバイでつくられてるんですか?

日高 いや、あくまで名前に使ってるだけで、製造場所はイギリスですね。

中田 なるほど。マーケティング戦略のような意味合いで名づけたという側面もあるんでしょうか。ボンベイっていうイメージが豊かで美味しそうだ、みたいな。

日高 それもありますね。「ボンベイ」という響きにはエキゾチックなイメージがあるんでしょうね。当時の感覚だと、イギリスの一部というイメージも大きかったんだと思いますが、大英帝国の一番大きな植民地で、それでいてすごく異国感のある場所みたいな。ジンをつくるうえで重要な、スパイスの象徴だということも大きかったと思います。

中田 なるほど。それは合点がいきますね。

日高 ボトルにも記載があるんですが、ボンベイ・サファイアには10種類のボタニカル(スパイスやハーブ)が入っていて、すべてではないですがその中には実際にインドが原産のボタニカルも香りづけに入ってます。

ボンベイ・サファイアのボタニカルは、全種類・全生産地を開示している。

中田 10種類ですか。結構な量のボタニカルが入ってますね。ところで、ジンの定義ってなんですか? この辺りのボタニカルの用法が関係しているものなのでしょうか。

日高 セイヨウネズという低木の果実を乾燥させたボタニカルである「ジュニパーベリー」で香味づけされたお酒というのがジンの定義です。「ベリー」といっても、ストロベリーとかブルーベリーみたいな果実味のするものではなくて、結構ウッディな感じの香りがするものです。ちなみに、ボタニカルの中身を最初に開示したブランドはボンベイ・サファイアです。

中田 そうなんですね。ボタニカルの原材料を、開示する企業としない企業があるということですか?

日高 開示しているブランドも徐々に増えてきてはいますが、まだ出してないブランドも結構あります。とはいえ、ほとんどのジンはどんなボタニカル使ってるか、そのすべては明かしてないですね。かくいう僕も、ボンベイ・サファイアのボタニカルがどれくらいの割合で入ってるかというところまでは流石に知らないです。

中田 なるほど、そこは企業秘密なんですね。蒸留の仕組みや、具体的な製法についてもお聞きしていいですか?

日高康介(BACARDI JAPAN)

日高 ボンベイ・サファイアは「ヴェイパー・インフュージョン製法」というボタニカルを蒸気を潜らせることで香りづけする方法でつくっています。まず、お酒の原料としては小麦ベースのスピリッツなんですけど、それを再蒸留するんですね。アルコールは水分より沸点が低いので、先に蒸発して上がっていきます。そしてその釜の上に、ハーブやスパイスなどいろいろなボタニカルが入ったバスケットがあって、蒸気がそこを通過するんです。すると、蒸気にボタニカルの香りが移る。

ボンベイジンは、ボタニカルを直接スピリッツに浸さず、加熱させて蒸気 (Vapor)となったスピリッツを銅製のバスケットに収めたボタニカルを通過させることで、ボタニカルの香り高い部分だけを吸収 (Infusion)する

中田 なるほど、「インフュージョン」って注入とか染み込ませるって意味合いですもんね。

日高 そして、冷却してもう一度液体に戻し、あとは水を足したりして味を調えると。また、そうしてできた樽の中に溜まったジンは偏りがあるHead(最初)とTail(最後)は切り落として、Heart(真ん中)だけ使うというのもボンベイ・サファイアのこだわりです。

中田 その「Heartだけ」ってとてもおしゃれな表現ですね。中心部分だけ飲むことができるというのも贅沢です。

元は紙幣の印刷工場? イギリスのラヴァストーク・ミル蒸溜所

日高 製法もユニークですが、ボンベイ・サファイアは現地の蒸留所がまた建築として特徴的でして。イギリス西南部にある「ラヴァストーク・ミル蒸溜所」というところで、2014年からは一般公開もされてます。グラスハウスになっていまして、ロンドンオリンピックの聖火台をデザインしたデザイナーによる設計となっています。製造工程だけでなく、ボンベイ・サファイアに使用されているボタニカルを、原産地を再現した植物園で見ることができるんです。

ロンドン・ハンプシャー地方にある豊かな自然に囲まれたラヴァーストーク・ミル蒸留所。18世紀には英国の中央銀行との契約によりヴィクトリア紙幣の造幣局、19世紀にはインド政府との契約でルピーの造幣局として活躍した施設を2010年にボンベイが譲り受けた

中田 へえ、これはすごく美しい建築ですね。行ってみたい。

日高 実際、蒸留所自体もイギリスの建築の賞を獲っています。じつはこの蒸留所は、イングランド銀行の紙幣用の高品質紙を製造していた歴史的な建造物をリノベーションしたものなんです。

中田 お金をつくっていた場所なんですね、おもしろい。周りはどのような環境なんですか?

日高 ロンドンから車で一時間くらいの牧草地帯で、空気も水質もすごく綺麗です。僕も現地に行ったことがありますが、すごく閑静な場所ですよ。蒸留所の中には小川も流れています。また、世界で唯一の「マスター・オブ・ボタニカル」という役職のイヴァノ・トヌッティという人がボタニカル選びの責任者なんですが、こういう専門の担当を置いている蒸留所もボンベイ・サファイアぐらいですね。普通はそこまでやってないんですよ。

ジンメーカーとして、ボタニカル責任者 (Master of Botanical)を専属契約。ボタニカルはすべて手作業で丁寧に扱われ、ドライボタニカルに加工し原料化する

中田 そうなんだ、人の目利きも重要なんですね。ちなみに「ジン」自体は、もともとイギリスのお酒なんですか?

日高 いえ、もともとの発祥はオランダですね。その後イギリス人が洗練させて、最終的にアメリカに渡り、カクテルに使われるようになって普及したというかたちです。

ジンが創造の好奇心をかき立てる、「Stir Creativity」に込められた意味

中田 ボンベイ・サファイアを表す、「Stir Creativity」というコピーの意味についても詳しく教えていただけますか?

日高 日本語で訳すと「かき立てる好奇心」という意味になるんですけど、この言葉には、どんな人もクリエイターであることを意識してほしいという思いがあります。普段生活していてもクリエイティビティって色々なところに転がってると思うんですけど、例えば家でお酒を飲むとき、いつもはビールだけど今日はジントニックにしてみようとか、そんなちょっとした気づきもじつはクリエイティビティなんじゃないかと僕は思っています。そこでボンベイ・サファイアがクリエイターの人と皆さんをつなぐハブとなって、皆さんのクリエイティビティを刺激しながら、創作活動をサポートできればという想いが込められています。

中田嘉生(terminal Inc.)

中田 この英語のコピーは秀逸ですよね。「Stir Creativity」って、たった2ワードでコンセプトを表現できているのが素晴らしいと思う。「Stir」って「かき混ぜる」って言う意味ですよね。Barやお酒の雰囲気も言葉から感じられます。

日高 そうですね。カクテルをかき混ぜるのも「Stir」と言うんですけど、エモーショナルな感情を刺激するという意味合いもあって、このふたつの意味を重ね合わせました。

中田 先ほど教えてもらった、ジンを蒸留する際にいろいろなボタニカルが混ざってる様子も「Stir」で表されてるような気がして、そこもボンベイ・サファイアっぽいなと言葉のイメージから連想しました。

日高 じつは「ヴェイパー・インフュージョン」って、ボンベイ・サファイア特有の製法なんですよね。他のジンは、蒸留の際に漬け込んだものを蒸留する方法が多いんです。だから、イメージで言うと水出しコーヒーとアメリカンエスプレッソぐらい違う。他のジンは芯まで抽出しているのでその分ガツンとした華やかさがあるのですが、ボンベイのジンはすっきりしたスムースな味わいがあります。また、「持続可能なジン」を目指したサステナブルな製法を取り入れているのも特徴です。

中田 サステナブルというワードは近年、メーカーとって重要なポイントですよね。どういったところで取り組んでいるんでしょうか。

日高 ボンベイ・サファイアで使われる10種類のボタニカルのうち8種類の原料がすでにFor Life基準(持続可能な慣行の認証で世界をリードするエコサートが授与)にて認証を受けています。また、豊作や不作に左右されずに高品質のボタニカルを使用するために、ボンベイ・サファイアの農園は所有せず、ボタニカル責任者が毎年品質を見極めて農家単位で契約しています。その農家とコミュニティの雇用や福利厚生も含めて、持続可能な生産をしていこうという取り組みなんですね。2025年には主要原料の100%を持続可能性の認証を目指すのが目標です。

 

アカデミック? ヒップホップっぽい? ジンに対するイメージと相性のいい食べ物

日高 ちなみにジンって、結構人気に浮き沈みがあったんですよ。18世紀ぐらいから見ていくと大体4回ぐらいブームがあるんですけど、昔は粗悪なジンが広まってしまったケースもあって、最悪の場合、失明してしまうケースもあったようです。

中田 それは怖いですね。

日高 その後もウォッカの方が人気があったり、ジン自体がちょっとクラシックでダサいみたいなイメージが定着していた時代もあるんですけど、ジンとイノベーションをくっつけて「ジノベーション」という言葉をつくって「プレミアム・ジン」というジャンルを世に出したあたりから人気が再燃したというところですね。

中田 そうなんだ。たしかに、お酒ってマーケティング上でカッコよく感じさせたら勝ち、みたいな側面が結構ありますよね。そういえば、僕はヒップホップが好きなんですけどSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)っていうアーティストの「Gin&Juice」という90年代に出された曲があって。高校生の時にその曲を聞いていたので、なんかジンはちょっとワルが飲むみたいな、そういうイメージをずっと持ってましたね。

日高康介(BACARDI JAPAN)

日高 なるほど、ヒップホップとジンが結びつくのはおもしろいですね。僕はどちらかといえばジンにはアカデミックなイメージを持ってました。ヒップホップはどちらかと言えばブランデーですね。ブランデー揺らしながら高級車の後部座席に座ってみたいな(笑)。

中田 それもありますね、お酒に対するイメージの違いみたいなものが各々で結構ありそう。Snoopが飲んでたジンがボンベイ・サファイアなのかどうかはちょっとわからないですが、僕はその曲の印象がすごい強くて、「ジンはワルくてカッコいい」みたいな、そういう感覚がずっとありました。

日高 そもそもお酒が大人っぽいというか、嗜好品ですからね。20歳になってお酒飲めるようになっても、最初はお酒の味なんてそんなにわかんないですよね。でも当時って、飲むのがカッコいいみたいな感じで、僕も味もわからず無理して飲んでましたね。ファッション性みたいな、そういうところに惹かれて。

中田 僕もです。お酒のことはよくわからないけど、「とりあえずジントニックって言っといたらいいかな……」みたいな、そういう背伸びした感じはたしかにありました。

日高 クラブとか遊びに行っても、メニューがよくわからないから、なんとなく聞いたことある「ジントニック」を頼むみたいな(笑)。でも僕は大人になってからは、Barや居酒屋で1杯目にジントニックを選ぶことが多くなりましたね。

中田嘉生(terminal Inc.)

中田 フードペアリングの観点で、ジンと合う食べ物ってあるんでしょうか。

日高 一回調査したことがあるんですが、カレーとの相性はすごく良かったですね。あと、ペンネアラビアータやお魚のフライともすごく相性がいいというのが化学的に証明されました。ボンベイ・サファイアはハーブやスパイスでつくられているので、スパイシーな食べ物とすごく合うみたいですね。これまではジンって単体としてや食後に飲まれるシーンが多かったと思うんですが、食事と一緒に飲むという食中酒のトレンドも最近出てきていて。ボンベイ・サファイアもお家で気軽に、食事のお供に飲むような、そういう提案を今後はしていこうと思っています。

中田 カレーもボンベイもどちらもルーツはインドですもんね。今日まで僕はボンベイ・サファイアがインド由来っていう認識がまったくなかったですが、エスニックなお店のカレーにすごく合いそうな気がしてきました。

日高 そうですね。これからは皆さん、お店でカレーを召し上がる時はぜひ店員さんに一言、「ボンベイ・サファイアありますか?」と聞いてみてください(笑)。

左から中田嘉生(terminal Inc.)、日高康介(BACARDI JAPAN)

中田嘉生氏(terminal inc.)も参加決定! 「ジントニック・アートグラス・コンペティション」

 今回のインタビューにてボンベイ・サファイアのブランド・オリジンに触れた中田氏が、そのなかで生まれたインスピレーションをもとにグラスデザインを考案。2021年8月31日まで開催中の「BOMBAY SAPPHIRE Gin & Tonic Art Glass Competition」に実際に作品を応募します。

 
僕のまわりには「よくそんな事思いつくな!」と、思わず感心するようなクリエイティビティに溢れた人が沢山いる。 彼らの何がそうさせるのか。観察を続けてひとつわかったことがある。だいたいおんなじ毎日とみせかけて、生きているとじつは沢山のモノゴトに出会っている。どんなに小さな事でも、見逃さず自分なりに受け止め、紐解いて解釈したり。「これだ!」と思ったことに対してはこれでもかと掘り下げたり。この積み重ねが、「ヴェイパー・インフュージョン製法」のように、その人の頭の中で混じり合い、香りづけされ、個性や創造性を形づくっているのだなと思った。ボンベイ・サファイアのブランドコンセプトが“Stir Creativity”だと聞いて、そんなことを考えました。今回つくったデザインは、10種のボタニカルの名前を表記したカタカナと英語のタイポグラフィーが、蒸気となり、混じりあうような様子をイメージしました。もしこのデザインがグラスになって、誰かの好奇心をかき立てるキッカケになったら幸せです。
──中田嘉生
中田嘉生によるグラスデザイン