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マリーナ・アブラモヴィッチが語る。「人生こそが最大のインスピレーション」

世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」を彫刻部門で受賞したマリーナ・アブラモヴィッチ。肉体や精神の限界に挑む過激な表現を通じて、芸術の本質を追い求めたアーティストが語るものとは?

文=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

マリーナ・アブラモヴィッチ

 世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」。今年の第36回受賞者として選ばれたマリーナ・アブラモヴィッチ(1946〜)が合同記者懇談会で取材に応じた。

 取材に際し、まずアブラモヴィッチが語ったのは、2000年の来日時に「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」で制作した、夢を見るための宿泊体験ができる作品《夢の家》の重要性についてだった。

・《夢の家》はなぜ重要な作品か?

 大地の芸術祭の特徴は、地元の人々を訪ねて美術作品の設置許可を取るところからスタートする点にあります。私が選んだ村には6名しか住んでおらず、ある日の夕方、村の集会所で自分のやりたいこと、つまり「夢の家をつくりたい」ということをお話ししました。それを村の皆さんに伝えたところ、気に入っていただけました。

 閉幕後は取り壊す予定でしたが、地域の皆さんが残すことを希望してくださいました。現在も作品は現地に残っており、宿泊者には食事も振る舞ってくださっています。地震で被害を受けた際も、現地の方々が修復してくださいました。

 なぜこの作品が私にとって大切なのかというと、アートとは王や貴族などの特権階級や企業のものではなく、人々のものであると考えているからです。

・パフォーマンスで表現を続ける理由