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「Fire, Walked Against Us 火は我らに背いて」。ロサンゼルス近郊の山火事、現場からの最新リポート【3/3ページ】

 公的な支援はどうか。私の勤務先であるロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)は、火事後初の週末の入館料・駐車場料金フリーをいち早く発表。2日間で6000人を超える来館者数を記録し、人々にとってアートが一時の休息となるとこを示した。好評に応え、続く週の入館料なしも決めた。

 加えて、火事発生から1週間後、 ジャン=ポール・ゲッティ財団が音頭をとり、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)、ハマー美術館、LACMA並びに中華系のEast West Bankらをパートナーに1200万ドルの緊急救済基金「LA Arts Community Fire Relief Fund」を設立した(*3)。今回の火災の影響を受けたすべてのアーティストおよびアート従事者への支援を目指したもので、申し込みは簡素に済むよう整えた。個人支援の参加も可能で、短期、長期の救済を目指す。

 また、2月下旬のフリーズ・ロサンゼルスは、この街と、LAアートの復興をフェアの核にすると発表した。参加ギャラリーは、可能な限りロサンゼルスの作家を取り上げるよう、舵を切り替えた。

 でも、とマーラは言った。「どこまで本当に助けてもらえるのか、わからない」。 基金や支援と多くの人は言うけど、抽象的で、すべてが超現実みたいなんだから、と力なく続けた。

 フリーズ・ロサンゼルスが、甚大な災害の被害者たちにとって真の支援や復興の起爆剤になるのか懐疑的な声もあるし、実際、参加を取りやめた地元ギャラリーもある。

 結局、太平洋側のパシフィック・パリセーズ 、内陸のイートンキャニオンを含めた同時多発の山火事で、1万6200棟以上の建物が焼失・破壊された。アメリカ史上、最悪の被害規模だ。すでに問題となっていた家屋に加え、今回の災害はアートや収蔵品に対する保険の問題にも直結し、作品の運搬や貸借にも影響が出るだろう。そのため、南カリフォルニア内のインスティチューション間の共助や収蔵作品の共有が、以前にも増して必要となると予想される。

 火は、自然は、私たちに容赦なかった。「Fire Walk With Me」のフレーズで知られるドラマ『ツイン・ピークス』の監督であるデイヴィッド・リンチが亡くなったのも、今回の火災からの避難の最中だった。

*1──Mikey Hirano Culross, “This Is Home,” The Rafu Shimpo, January 21, 2025, https://rafu.com/2025/01/this-is-home/
*2──Gessica Gelt, “How Altadena became the L.A. dream for Gen X and millennial artists, writers, musicians,” Los Angeles Times, January 15, 2025, https://www.latimes.com/entertainment-arts/story/2025-01-15/altadena-eaton-fire-artists-writers-musicianz
*3──https://www.getty.edu/about/development/LAArtsReliefFund2025.html

編集部

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