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西洋美術における人種の表現から、『小池一子の現場』まで。『美術手帖』2月号新着ブックリスト(1)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。主に西洋美術のなかで異民族・異文化がどう描かれてきたのかを概観する書や、小池一子の領域横断的な活動を網羅した1冊など、注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=中島水緒(美術批評)+岡俊一郎(美術史研究)

西洋美術とレイシズム

 キリスト教の影響を強く受けた文化圏における視覚芸術のなかで、異民族や異教徒といった他者がどのように肌の色という視覚的特徴と結びつけて描かれていたのかを歴史的に概観する。聖書に見られる神話的な記述から現代までを包摂する巨視的な視点から、人種がいかに可視的なものとして描かれてきたのかを豊富なカラー図版で提示。著者の現代社会に対する懸念をはさみながら紹介される事例を通して、視覚芸術における人種化の問題がほかの社会的抑圧関係、例えば、ジェンダーの問題とも密接に関わっていることが浮かび上がってくる。(岡)

『西洋美術とレイシズム』
岡田温司=著
筑摩書房|1000円+税
 

レンブラントの身震い

 ゲーム・アート・数学の証明等の幅広い領域でコンピュータが示しつつある創造の事例を通して、数学者が人類の創造性について考察するエッセイ集。「人工知能」と一括りにされがちな事物の原理的説明も知ることができる。囲碁で劇的な勝利を収めるなど、本書で紹介されるアルゴリズムの飛躍的な進化は身震いをもたらす。いっぽうで、精神と身体という伝統的な概念対を持ち出せば、事例の多くは精神のレベルでの到達のようだ。創造性の探究に不可欠だと思われるもうひとつの側面、つまり機械の身体が創造性とどのように結びつくのかという問いのさらなる解明が待たれる。(岡)

『レンブラントの身震い』
マーカス・デュ・ソートイ=著
冨永星=訳
新潮社 2500円+税
 

美術/中間子 小池一子の現場

 1980年代にいち早く日本の現代美術の動向を海外に紹介したオルタナティブスペース「佐賀町エキジビット・スペース」の運営など領域横断的な活動で知られる小池一子の活動を、キャリア初期から、現在進行形のプロジェクトまで網羅的に紹介した1冊。小池を取り巻く同時代のリーダーたちとの人間関係を通して、あるプロジェクトが次のプロジェクトへと展開・連鎖していき、やがてはファッション・デザイン・現代美術などの各ジャンルの流れとなる様子が描写される。「中間子」という言葉に表れているように、小池が果たしてきた触媒的な在り方が伝わってくる。(岡)

『美術/中間子 小池一子の現場』
小池一子=著
平凡社|3000円+税

『美術手帖』2021年2月号「BOOK」より)

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