2020.12.29

Amazon Prime Videoで見られるアートムービー10選。ポスト印象派の画家たち、マーケットとコレクター、いま知りたいアーティストまで

スマートフォンやパソコンで、いつでも見たい動画コンテンツを視聴できることから近年注目を集めるストリーミングサービス。今回はAmazon Prime Videoで見られるおすすめのアートムービーを紹介。今年のホリデーシーズン、自宅で過ごす時間のお供にいかがだろうか。中には配信期限つきの作品もあるため、気になるものは早めのチェックをおすすめしたい。

『美術館を手玉にとった男』予告編より(https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B01LWJUZZJ/ref=atv_dp_share_cu_r)
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映画が物語るポスト印象派の画家たち

 まず、紹介したいのがポスト印象派の作家をあつかったり、作風に影響を受けて制作された作品だ。

『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』

 フィンセント・ファン・ゴッホの死後、ほぼ無名だったその作品に出会い、個人コレクターとしては最大規模の約300点を収集して、一大コレクションを築いた女性、ヘレーネ・クレラー=ミュラー。そのミュラーの視点を通して、ゴッホの人物像と作品に迫るドキュメンタリー映画が『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』(2019)だ。来年9月より東京都美術館での開催が予定されている「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」も、このミュラーのコレクションに焦点を当てた展示なので、本作で予習してはいかがだろうか。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』

 ゴッホの孤独でドラマティックな人生を映像化した『永遠の門 ゴッホの見た未来』(2019)にも注目だ。本作の監督、ジュリアン・シュナーベルは自身も画家であり、『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)を手がけたことでも知られ、ゴッホを演じるのは『スパイダーマン』(2002)などで知られる俳優、ウィレム・デフォー。南仏・アルルへ向かうところからスタート。ゴーギャンとの生活や決別を経てその生涯を閉じるまでを追い、ゴッホが生涯をかけて伝えようとした「この世の美しさ」とは何かを探る。

『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』

 一時はゴッホと志を同じくしながらも、やがて袂を分かつことになったポール・ゴーギャンに焦点を当てた作品がエドゥアルド・デルック監督『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』(2017)だ。画家として名をなしながらも、作品が売れず行き場を失っていたゴーギャンは、絵画制作の場をフランス領タヒチに求めてひとり旅立つ。ゴーギャンが島の奥地の森で少女・テフラと運命の出会いを果たす。代表作を次々に生み出していくゴーギャンだが、やがてこの地でもゴーギャンを苛む苦悩の日々を描く。

『セザンヌと過ごした時間』

 近代絵画の父と称されるポール・セザンヌと、文豪エミール・ゾラの40年にわたる友情を描いた作品が、ダニエル・トンプソン監督『セザンヌと過ごした時間』(2017)だ。少年時代に出会ったセザンヌとゾラ。境遇こそ異なるがともに芸術を志すふたりは、夢を語り合い成長してきた。やがてゾラは小説家として成功を収めるが、セザンヌはなかなか評価されず落ちぶれていく。そんな折、ゾラが画家をモデルにした小説を発表したことで、2人の友情に亀裂が入る。

 現代美術の礎となった、ポスト印象派の画家たちの人生を映画で探求するのもおもしろい。

アートマーケットやコレクターを通して「価値」を問う

 近年、オークションでの美術作品の高額落札や、若手アートコレクターのSNS発信などにより、一般層にも注目されているアートマーケット。ここでは、アートマーケットやコレクターを題材にした作品を紹介。

『アートのお値段』

 ナサニエル・カーン監督『アートのお値段』(2017)は、アートマーケットを知るための映画として、よく話題にのぼる作品だ。秋のオークション開催まで6週間に迫ったニューヨークのサザビーズ。オークショニア、ギャラリスト、評論家、コレクター、アーティストなど、各立場の人々の思惑や価値観が混ざり合う。ラリー・プーンズ、ジェフ・クーンズ、ジョージ・コンド、ゲルハルト・リヒターらが登場するほか、サザビーズでの実際のオークションの様子などを紹介。「アートの価値」をさまざまな角度から掘り下げる。

『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』

『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』予告編より(https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0859R6BKQ/ref=atv_dp_share_cu_r)

 リサ・インモルディーノ・ヴリーランド監督『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』(2018)は、アメリカ随一の影響力を持った現代美術のコレクター、ペギー・グッゲンハイム(1898〜1979)に焦点を当てた映画だ。サルバドール・ダリやパブロ・ピカソを初めとした20世紀を代表する画家の作品を所蔵し、当時無名だったジャクソン・ポロックを見出しすなど、絶大な影響力も誇ったグッゲンハイム。本作は、彼女の生前に収録されたインタビューに基づき、多くの芸術家たちとの愛の遍歴も含めて、ひとりのコレクターの華麗な生の魅力を描く。

『美術館を手玉にとった男』

 全米46カ所の美術館を30年にわたって騙し続けた贋作作家マーク・ランディスを描いたドキュメンタリーがサム・カルマン/ジェニファー・グラウスマン監督の『美術館を手玉にとった男』(2011)だ。アメリカ各地の美術館にある名作の数々が贋作を、ひとりでつくった男マーク・ランディス。贋作が判明したことでFBIが捜査に乗り出すが、ランディスは無償で寄贈していたため罪に問われることはなかった。ランディスの素顔に迫り、事件に関わった人々の姿を通じてアートの価値の意味や、アートを受容する社会の姿勢を考えるきかけになるだろう。

いま語るべきアーティストを、映画で知る

 注目が集まるアーティストたちのバックグラウンドを知ることができるのも、アートムービーの魅力のひとつ。2020年という1年のできごとを振り返り、いま語るべきアーティストたちを知る映画を紹介。

『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』

 新型コロナウイルスに際して医療従事者を称賛する新作を5月に公開、ジョージ・フロイド殺害事件に関連した新作を6月に発表するなど、今年も多くの話題を集めたバンクシー。いまや世界中の人々が名はしるようになったアーティストだが、その詳細は謎につつまれている。『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2011)は、そんなバンクシーが監督し、アカデミー賞にノミネートされるなど、話題を集めたドキュメンタリーだ。アート業界を痛烈に皮肉りながら、そのパフォーマンスと同様にユーモアあふれる仕上がりとなっている。

『アイ・ウェイウェイは謝らない』

 2020年は香港で中国政府の方針を追従する政権と民衆の対立が激化し、世界中の注目を集めた年でもあった。アイ・ウェイウェイもまた、中国政府という権力と長年戦ってきた世界的なアーティストだ。アリソン・クレイマン監督『アイ・ウェイウェイは謝らない』(2013)は、彼がひとりのアーティストとして、権力と対峙しながら自身の制作をつづける様子を記録したドキュメンタリーだ。08年の北京オリンピックにクリエイターのひとりとして参加しながら大会を糾弾し、四川大地震の際に多くの児童が死亡した校舎倒壊事件を調査した結果、政府と対立し現在はドイツを拠点とするアイ・ウェイウェイ。アーティストはいかに権力と対峙し、自由を守ることができるのか、多くの問いを孕んだ作品だ。

『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』

 今夏、過去最大規模の個展となる「内藤礼 うつしあう創造」を金沢21世紀美術館で開催した内藤礼。タカ・イシイギャラリーでの個展も、その静謐な空間づくりが注目された。『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(2015)は、内藤の代表作のひとつである豊島美術館の《母型》(2010)と出会い、その場の持つ力に強く惹かれた監督・中村佑子によるドキュメンタリーだ。当初、内藤に取材を断れた中村は、内藤のアートの本質である「生きていることは、それ自体、祝福であるのか」という問いに、カメラを向けずに迫ることを決意する。内藤の「不在」を埋めるかのように《母型》のもとに集った5人の女性たちを通して、内藤の作品がかたちづくってきたものとは何かを問いかける。