2020年、見逃せないアートムービーベスト6

毎年多くの作品が公開されるアートムービー。2020年にはどのようなラインナップが予定されているのか? 編集部が注目する6本をピックアップしてお届けする。

映画『HOUSE OF CARDIN(原題)』より (C) House of Cardin - The Ebersole Hugues Company

"ろう"の写真家が「うた」に出会う。『うたのはじまり』(2月22日公開)

映画『うたのはじまり』より (C)2020 hiroaki kawai / SPACE SHOWER FILMS

 本作『うたのはじまり』は、 “ろう”の写真家として知られる齋藤陽道を主人公にしたドキュメンタリー。齋藤は20歳で補聴器を捨て、カメラを持ち、写真の世界へと飛び込んだ気鋭の写真家だ。

 幼少期の体験によって歌や音楽が嫌いになってしまった齋藤が、同じく“ろう”の写真家・盛山麻奈美と結婚し、聴者の息子を授かったことから、齋藤に「うた」に対する変化が生まれた。七尾旅人、飴屋法水、藤本猛夫といった人々との会話やコミュニケーションを通じ、「うた」とは何かを問いかける。

公開:2020年2月22日よりシアター・イメージ・フォーラムほか順次公開
監督・撮影・編集:河合宏樹
出演:齋藤陽道、盛山麻奈美、盛山樹、七尾旅人、飴屋法水、CANTUS、ころすけ、くるみ、齋藤美津子、北原倫子、藤本猛夫ほか
配給: SPACE SHOWER FILMS

作者不明の絵画を追って。『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』(2020年2月28日)

『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』より © Mamocita 2018

 仕事一筋の老美術商・オラヴィが、あるオークションに出品予定の絵画を見つけたことから『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』は始まる。

 その絵画にはサインもなく、「作者不明」のまま競売にかけられる。しかしオラヴィにはその絵が価値あるものだという確信があった。この絵画の真贋をめぐるオラヴィと孫息子・オットーの共同作業。作品の価値を問いかけるいっぽう、アートマーケットの現実も見せつけるような作品となっている。

公開:2020年2月28日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか公開
監督:クラウス・ハロ
脚本:アナ・ヘイナマー
出演:ヘイッキ・ノウシアイネン、ピルヨ・ロンカ、アモス・ブロテルス、ステファン・サウク
配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス 

モダニズム建築の宝庫が舞台。『コロンバス』(2020年3月)

映画『コロンバス』より (C) 2016 BY JIN AND CASEY LLC ALL RIGHTS RESERVED

 モダニズム建築の宝庫して知られる街、アメリカ・インディアナ州のコロンバス。ここを舞台にした映画が『コロンバス』だ。

 出会い、すれ違っていく若い男女を描いた本作。監督のコゴナダは、小津安二郎から大きな影響を受け、奥行きを生かした画面の構図や、間の取り方など、小津の芸術性を研究し、すべてのシーンで「映画の教科書」のような巧みな構図を実現した。美しい建築とふたりの男女、そしてそれを切り取る構図に注目してほしい。

公開:2020年3月よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・脚本・編集:コゴナダ
撮影:エリシャ・クリスチャン
音楽:ハンモック
出演:ジョン・チョー、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ロリー・カルキン、パーカー・ポージー、ミシェル・フォーブス
配給:ブロードウェイ

森山大道を追って。『過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家・森山大道』(2020年夏)

©︎「過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい」製作委員会

 ストリートスナップをライフワークに、これまで100以上の写真集を刊行してきた日本を代表する写真家・森山大道。

 1960年代よりキャリアをスタートさせた森山は、2019年に写真界のノーベル賞とも言われるハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど、海外での再評価も高まっている。そんな熱狂の裏で動き出す、森山の世界に魅せられたふたりの男たちによる伝説の写真集を復活させるプロジェクト。本作はその舞台裏と、いまも日々街で撮影を続ける森山のスナップワークの秘密に迫るドキュメンタリーである。

公開:2020年夏
監督・撮影・編集:岩間玄
プロデューサー:杉田浩光
音楽:三宅一徳
出演:森山大道、神林豊、町口覚ほか
制作・配給:テレビマンユニオン
配給協力:プレイタイム

伝説のファッションデザイナーに迫る。『HOUSE OF CARDIN(原題)』(20年秋)

映画『HOUSE OF CARDIN(原題)』より (C) House of Cardin - The Ebersole Hugues Company

 1960~70年代に日本を含め、世界的に爆発的な人気を博したファッションデザイナー、ピエール・カルダン。その人物像に迫るドキュメンタリー映画『HOUSE OF CARDIN(原題)』が2020年秋に公開される。

 本作では、カルダンの出生から女優ジャンヌ・モローとの私生活、独創的なデザインの秘密までをとらえるとともに、時代の先駆者となったカルダンの経営手腕にもフォーカス。出演者はジャン・ポール・ゴルチエ、シャロン・ストーン、ナオミ・キャンベルのほか、日本からも高田賢三、森英恵、桂由美など豪華な面々だ。

公開:2020年秋
監督:P・デイビット・エバーソール、トッド・ヒューズ
出演:ピエール・カルダン、ジャン・ポール・ゴルチエ、シャロン・ストーン、ナオミ・キャンベル、森英恵、高田賢三、桂由美
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム

ゲルハルト・リヒターの半生を映画化。『NEVER LOOK AWAY』(公開時期未定)

『NEVER LOOK AWAY』(原題)より (C)2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG

 現代美術界を代表するアーティスト、ゲルハルト・リヒター。その半生を基にした人間ドラマが『NEVER LOOK AWAY』(原題)だ。

 若き芸術家・カートは西ドイツへ渡るが、ナチス時代と東ドイツ時代に過ごした幼少期の記憶に苛まれ続けていた。しかし運命の女性エリーに出会い、自分の運命だけでなく常に悩まされ続けてきたトラウマを絵画に反映させることで過去と向き合おうとする。2019年アカデミー賞外国語映画賞、撮影賞にノミネートされた本作。詳細は明かされていないものの、注目の的となることは間違いないだろう。

公開:時期未定
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:トム・シリング、ポーラ・ビール、セバスチャン・コッホ 、サスキア・ローゼンタール

編集部

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