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バンクシーから建築家・磯崎新の新著まで。12月号新着ブックリスト(1)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。その真意を明らかにする吉荒夕記のバンクシー論や、今年は展覧会を多数開催している建築家・磯崎新の新著など、注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=近藤亮介(美術家)+中島水緒(美術批評)

『バンクシー 壊れかけた世界に愛を』

徹底した秘密主義と痛烈な社会風刺で知られるバンクシー。紛争地帯の壁画やオークション会場での「シュレッダー事件」など、しばしばゲリラ的な活動が話題に上るが、本人は「ストリートアート」の旗手として注目される以前から、社会的弱者に寄り添う一表現者として、現実社会の変革を目指してきた。著者は、作品と場所との関係に着目し、海外での作品体験や関係者取材を踏まえながら、その真意を明らかにしてゆく。「社会関与の芸術」に関心を持つ人にもぜひ読んでほしい1冊。(近藤)

『バンクシー 壊れかけた世界に愛を』
吉荒夕記=著
美術出版社|2000円+税
 

『美學校 1969−2019 自由と実験のアカデメイア』

東京は神田神保町の路地裏に位置する古いビル。およそ学校のイメージからかけ離れたその3階に、芸術の私塾「美学校」はある。今年で50周年を迎えた同校は、これまで一貫して既存の教育に反旗を翻し、現役アーティストの講師を中心とする少人数制クラスを開き、多彩な表現者を輩出してきた。しかし、その知名度に比べて実態はいまだ謎に包まれている。本書はその謎のベールを剝がすべく、教程の紹介、半世紀にわたる校史、関係者の証言などを通して、オルタナティブ教育の真髄に迫る。(近藤)

『美學校 1969−2019 自由と実験のアカデメイア』
美学校=編
晶文社|2700円+税
 

『瓦礫の未来』

今年プリツカー賞を受賞し、米寿を迎えた建築家・磯崎新。新著の目次には、ザハ・ハディド、クルディスタン、安仁鎮、平壌と、不穏な名前が並ぶ。相次ぐ大震災やテロで世界に瓦礫の山が遍在する今日、辺境こそ「アーキテクチュア」と改めて向き合うための最適な土地で ある。古今東西の歴史に自身の逸話を織り交ぜて展開される物語=批評は、一 読しただけでは消化できないが、心配は無用。なぜなら著者が断るように、本書はロゴスをイメージへ転移させる壮大な企てなのだから。 (近藤)

『瓦礫の未来』
磯崎新=著
青土社|2400円+税

『美術手帖』2019年12月号「BOOK」より)

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