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INSIGHT - 2018.11.25

ハーストからマッギンレーまで。世界的アーティストが手がけたミュージックビデオをピックアップ

1990年代から2000年代に発表された、世界的アーティストが手がけたミュージックビデオをピックアップ。巧妙な映像コラージュが楽しい作品から、フェミニズムや大衆文化に言及する名作まで、各楽曲の世界観を後押ししたアートワークを紹介する。

セイント・ヴィンセント「New York」より

セイント・ヴィンセント「New York」より

アレックス・ダ・コルテ監督
──セイント・ヴィンセント「New York」(2017)

 ニューヨークをベースに活躍し、「インディーロックの女王」とも呼ばれるセイント・ヴィンセント。昨年リリースされたシングル「New York」では、ニューヨークを舞台とした恋愛模様を切なく伸びやかな声で歌い上げており、その叙情的な一面に胸を打たれたリスナーも多かったのではないか。

 本作のビデオを手がけたのは、ホイットニー美術館でのグループ展に参加し話題となった、人気ヴィジュアル・アーティストのアレックス・ダ・コルテだ。ダ・コルテ自身が夢見るニューヨークを表現したというその映像は、鮮烈な色彩が展開されており、アコースティックな曲調とのギャップが面白い相互作用を生み出した。

ライアン・マッギンレー監督
──シガー・ロス「Varúð」(2012)

 アイスランド拠点のバンド「シガー・ロス」と、人気写真家 ライアン・マッギンレーのコラボレーションは、『残響』(2008)のアルバム・ジャケットを皮切りにスタート。

 その後、12人の映像作家が2012年にリリースされたアルバム『ヴァルタリ〜遠い鼓動』から得たインスピレーションを基軸とした新作映像を発表するプロジェクト「Mystery Film Expriment」にもマッギンレーは参加した。

 12曲のなかから「Varúð」のビデオを監督したマッギンレー。街中を写したごくシンプルなものでありながら、蜃気楼を思わせる柔らかな光と色彩が美しい。

マルコ・ブランビヤ監督
──カニエ・ウエスト「POWER」(2010)

 カニエ・ウエストによる楽曲「POWER」(2010)のミュージックビデオは、美術史的要素を強く取り入れたものである。複数の映像クリップが巧妙にコラージュされたこのビデオの監督を務めたのは、映画製作者/アーティストとして注目を集めるマルコ・ブランビヤ。

 ギリシャ・ルネサンスの絵画を彷彿とさせる構成のなか、大きなゴールド・チェーンを首からぶら下げたカニエは、まるで「ヒップホップの王様」のような風貌を見せている。

ダミアン・ハースト監督
──Blur「Country House」(1995)

 「Country House」は、イギリスのオルタナティヴ・ロックバンド「Blur」が、初めて全英でチャート1位を獲得した楽曲だ。本作は、仕事で成功をするも引退し、田舎に大きなカントリー・ハウスを買って悠々自適に暮らす男の姿が、陽気なリズム進行とともに表現されている。

 このビデオの監督は、メンバーであるアレックスの大学時代の友人として親交のあったダミアン・ハースト。2人はともにロンドンのゴールドスミス・カレッジで芸術を学び、卒業後の1998年にもバンド「ファット・レス」を結成している。

ピピロッティ・リスト
──「I’m a Victim of This Song」(1995)

 最後に、アーティスト自身が楽曲を手がけた作品を紹介する。ピピロッティ・リストは、テレビ番組をはじめとする大衆メディアの要素を柔軟に吸収しながら独自の映像表現を確立したアーティスト。

 作品はいずれも特殊効果によって輪郭や色彩が大きく変えられており、ポップな世界観となっているが、その奥にはセクシャリティや女性のイメージといった社会問題への言及も含まれている。

 また、多くの作品にはリスト自身が作詞作曲した音楽が用いられ、オリジナルの世界観を徹底されている。いま一度、初期作品であり代表作のひとつである《I’m a Victim of This Song》(1995)に、リスト芸術の源泉をたどりたい。