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美術批評家のエッセイ集から建築家の頭の中まで。10月号新着ブックリスト(2)

雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。彫刻から建築、エッセイ集まで、『美術手帖』10月号に掲載された注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=近藤亮介(美術家)+中島水緒(美術批評)

左から『フラジャイル・コンセプト』『ジャコメッティ 彫刻と絵画』『聖と俗 ─分断と架橋の美術史』

『聖と俗─分断と架橋の美術史』

西洋美術の発展と豊穣は、中世の宗教改革から始まった――その改革は、従来の宗教美術を偶像として否定するいっぽうで、世俗的・民衆的な美術を生み出し、ヨーロッパ社会に大変革をもたらした。イタリア美術史を専門とする著者が、西は近世ミラノの宗教画からアンディ・ウォーホルまで、東は長崎の「かくれキリシタン」聖画や山形のムカサリ絵馬から独裁者のポスターまで、古今東西の美術・画像を往還しながら物語る、5世紀にわたって分離/融合してきた聖と俗の表象史。(近藤)

『聖と俗 ─分断と架橋の美術史』
宮下規久朗=著
岩波書店|3400円+税 

『ジャコメッティ 彫刻と絵画』

ジャコメッティの絵画のモデルを務めたことでも知られる美術批評家が著したジャコメッティ論の集成。原著は1994年の刊行。ジャコメッティといえば細長く引き伸ばされた人物の彫像が有名だが、シュルレアリスムに影響を受けた初期のオブジェから絵画作品までを網羅して分析した本書はジャコメッティ研究の一級資料だ。肖像画制作のプロセス記述、美術家自身が遺したテキストの読解を通じ、ジャコメッティ芸術の本質を開示。著者によるインタビューも必読。(中島)

『ジャコメッティ 彫刻と絵画』
デイヴィッド・シルヴェスター=著
みすず書房|5000円+税

『フラジャイル・コンセプト』

建築家はコンセプトをかたちにするまでにどんな思考を経るのか。青木淳が大事にするのは、不確定な揺らぎを引き起こすフラジャイルなコンセプトである。組み合わせを固定せずに意味内容を流動化させること、仮設にとどまる全体性を基礎として物事を考えること。本書は青木が様々な媒体に発表してきたテキストを集めた論集。これまで手がけてきたプロジェクトが具体的あるいは抽象的に語られ、揺らぎを含みながら生成・変化していく青木の建築観が明らかになる。(中島)

『フラジャイル・コンセプト』
青木淳=著
NTT出版|2600円+税

『美術手帖』2018年10月号「BOOK」より)

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