EXHIBITIONS

田部光子展「希望を捨てるわけにはいかない」

田部光子 プラカード 1961 東京都現代美術館蔵

田部光子 人工胎盤 1961(2004再制作) 熊本市現代美術館蔵

田部光子 Hana 1990 作家蔵

 日本統治下の台湾に生まれ、福岡を拠点に活動する美術家・田部光子。その展覧会「希望を捨てるわけにはいかない」が福岡市美術館で開催される。

 田部は1933年生まれ。46年に台湾から福岡に引き揚げ、絵画を独学し、57年結成の前衛芸術家グループ「九州派」の主要メンバーとして活動。その後も福岡の美術界だけでなく、女性たちをも牽引してきた美術家のひとりだ。同時代の社会の動きに敏感に反応し制作した《プラカード》や非常に早い時期に発表されたフェミニズム・アートとして近年注目を集める《人工胎盤》をはじめ、実体験と日々の思考から生まれた作品は、いまも見る者に強く訴えかける。

 社会の様々な障壁に立ち向かい、不平等に抗い、人々の背中を押し、なにより楽しみながら美術によって世のなかを変革しようと走り続ける田部。座右の銘「希望を捨てるわけにはいかない」は、田部の美術家としての姿勢を表している。

 本展では、74年に主宰した「九州女流画家展」など、これまでほとんど紹介されることのなかった70~80年代を含む、「九州派」時代から現在までの田部の活動を、作品と資料によって明らかにする。