クシノテラス 所蔵品展vol.1

　クシノテラスは、所蔵品展の第1回をにしぴりかの美術館で開催。4名の表現者たち、ラーテルさん（あなぐまハチロー）、小林伸一、戸舎清志、ストレンジナイトを紹介する。

　大阪府在住のラーテルさん（あなぐまハチロー）と名乗る女性は、発達障害や鬱病、統合失調感情障害など様々な障害を抱え、中学生の時から自宅で不思議な生物を描いて過ごしている。神奈川県在住の小林伸一は、75歳頃から自宅の外壁だけでなく、トイレや風呂場など一軒家すべてを手描きの絵で埋め尽くすようになった。天井にも菓子などをモチーフにした絵を貼るなど徹底している。

　島根県在住の戸舎清志は、建物以外の道路や駐車場、空き地などすべての空間が、無数の車で埋め尽くされた町の俯瞰図を描き続けている。そして、栃木県那須高原にある私設博物館「創作仮面館」の館主を務めていたストレンジナイト（生年非公開〜2018）と名乗る人物は、人前に出る時はつねに自作の仮面を被り、人目を避けマスクマンとして生活していた。館の内外には、生前に制作された多量の仮面やオブジェ、絵画などがいまも残されている。

　性別や生まれ育った場所など異なる環境に置かれた4名の表現者たちだが、共通しているのはそれぞれが独自の世界を構築し、圧倒的な数の作品をつくりだすことで、それを生きる力へと変換している点だ。

　クシノテラス主宰で、現在は静岡県へ移住し「アーツカウンシルしずおか」でチーフプログラム・ディレクターを務める櫛野展正は、「新型コロナウイルスの感染拡大が続き、自由に外出することも危ぶまれる状況ですが、こんなときこそ彼ら彼女らのようにみずからの表現へ没頭することで、未来への希望を紡いでみるのも良いのかも知れません。遠くなってしまった宮城県に思いを馳せながら、僕も静岡から展覧会の動向を静かに見守りたいと思います」と言葉を寄せている。