EXHIBITIONS

アペルト14

原田裕規「Waiting for」

2021.06.15 - 10.17

原田裕規 Waiting for 2021 © Yuki Harada

原田裕規 One Million Seeings 2019 © Yuki Harada

原田裕規 Waiting for 2021 © Yuki Harada

原田裕規 Waiting for 2021 © Yuki Harada

 若手作家を中心に取り上げる展覧会シリーズ「アペルト」の今回は、美術家・原田裕規の個展「Waiting for」を開催している。

 原田は1989年山口県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。社会のなかで広く認知されている視覚文化をモチーフに、人間の身体・認知・感情的な限界に挑みながら、現代における「風景」が立ち上がるビューポイントを模索している。バブル期に一世を風靡したラッセン、日本でオカルトブームを牽引した心霊写真、またオープンワールドゲームなどに用いられるCGI(Computer-generated imagery)に着目しながら、実写映像、パフォーマンス、CGI、キュレーション、書籍など多岐にわたって展開し、注目を集めてきた。

 作家にとって公立美術館での初個展となる本展は、2年ぶりの新シリーズ「Waiting for」を含む映像インスタレーションによって構成される。

 原田は2017年より、不用品回収業者などによって回収された引き取り手のない写真を集め始め、「心霊写真」シリーズとして作品化。同シリーズの新作《One Million Seeings》(2019)では、作家自身がそれらを1枚1枚手に取り、見つめる様子が映し出される。誰かによってかつて見られ、そして見放され、いずれ記憶からも歴史からも消えていくであろうイメージに対して視線を投げかける行為は、24時間にも及ぶ。

 いっぽう新作の映像作品《Waiting for》では、CGIの技術による「100万年前/後の風景」が映し出される。完全に人工的につくられた世界には、地球に現存するすべての動物の名前を呼び続ける声が響きわたり、強い不在の感覚を呼び起こす。

 一見、対照的な2つの作品だが、いずれにも、膨大な情報と向き合い、それを身体化しようとする人間の姿が記録されている。こうした行為を、作家は「Waiting(待つこと/待ちながら)」という言葉で表現している。

 本展では、2つの長編映像を数日間にわけて全編上映予定。原田は、人々が日々膨大な量の情報を手にすると同時に手放していく現代において、世界と向き合うひとつの態度を示す。

※まん延防止等重点措置適用に伴い、7月31日〜8月31日まで美術館主催の展覧会・プログラムを休止。詳細・最新情報は公式ウェブサイトへ。