「鷹野隆大 カスババ ―この日常を生きのびるために」(東京都写真美術館、2月27日~6月8日)

会場に広がるたくさんの写真群、順路の指示が無く自由に会場をめぐる構成はまったく知らない街を歩いているように感じました。鷹野さんの写真は彼の見たものをそのまま反映させたようなストレートさを感じさせます。しかし、彼のまなざしはどこか暖かく、この世界からこぼれ落ちそうな、でも大切なものを教えてくれている気がします。鷹野さんは「毎日写真」シリーズで普遍性を獲得し、「影」のシリーズではアノニマスな写真の魅力を発揮しています。これらのシリーズが同空間にあることで、写真を撮ることによって世界の輪郭を掴むような印象を得ました。
奈良国立博物館開館130年記念特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」(奈良国立博物館、4月19日~6月15日)

仏教・神道美術の「尊い」世界観を存分に味わうことができる、奈良博の130年記念にふさわしい展覧会でした。古代から続く「祈り」を形にしたものが一堂に会するこの展覧会では、仏像や仏画の荘厳さを損なうことなく展示しており、歴史的価値の高さに加えてこれを守り残してきたことの「尊さ」を感じました。会場のいたるところに子供向けの優しい解説文が添えられていたこともとても良い試みだと思います。展覧会中、仏像の前で思わず合掌してしまったのですが、きっと展覧会企画者の意図には「美術品」としての展示物ではなく信仰の形、歴史の重さ、そして仏教・神道美術に対する敬意の現れがあったのだろうという印象を受けました。
開館20周年記念特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」(九州国立博物館開館、7月5日〜8月31日)

「思い切ったなあ!」と今年一感じた展覧会です。展示作品の歴史をマンガという手法で伝えたり、梵鐘の音を実際に聞くことができたり、デジタルコンテンツで屏風に入ることができるような映像を見ることができたり、触れるレプリカがあったりと強烈な印象を残すものが多く設置されていました。展示を楽しんでほしい、博物館の役割を知ってほしいという気持ちが全面に出ており、面白さに振り切った展示は痛快。しかしながら展示物そのものの邪魔ならない範囲での面白い試みはバランスの良さを感じられました。九州国立博物館の「推し」キャラクターを決める投票も実施されており、主体的に作品に触れることができる素敵な企画でした。
























