EXHIBITIONS

目「ただの世界」

2021.07.06 - 08.07

Reference Scaper 2021 © 目 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

Reference Scaper 2021 © 目 Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

 現代アートチーム、目[mé]の個展「ただの世界」がSCAI THE BATHHOUSEで開催される。

 目は2012年より日本を拠点に活動。現在の中心メンバーは、アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二、インストーラーの増井宏文。果てしなく不確かな現実世界を、私たちの実感に引き寄せようとする作品を展開している。作品は手法やジャンルにはこだわらず、展示空間や観客を含めた状況、導線を重視し、メンバー個々の特徴を活かしたチーム・クリエイションに取り組む。19年には美術館初個展「非常にはっきりとわからない」(千葉市美術館)を開催した。

 本展は、目[mé]の活動コンセプトを表出する複数の作品と状況によって構成される。

 時間の概念を物質の移動ととらえ、鳥の群れのように小さな時計を空間に配置した《movements》、人間が認識できる「物質の移動の果て」のひとつのあり様を提示する 《matterα》《matterβ》など、「この世界は、私たちの肉体も含めた物質の粒がただひたすら漂い移動し続けている」と言う目[mé]独自の量子論的世界観を象徴する作品たちが並ぶ。

 本展の中心となる《Life Scaper》は、会場全体のインスタレーションとして構成される。所有者個々の人生のなかに存在することになる《Life Scaper》は、希望者に向けてヒアリング調査を実施し、その後、目[mé]と契約を交わすことによって所有できる作品だ。所有者は儚さや滑稽さ、美しさが伴う光景に遭遇する可能性を権利として得るが、実施やその実態は誰にも明かされることがなく、場合によっては所有者が気づかぬうちに実施されていることや、あるいは真相自体が疑わしいままその権利を持つこととなる。

 そこでは、これまでの目[mé]の作品のなかで用いられてきた「Scaper(スケーパー、「景色+人」の造語。現実にしてはできすぎていると言えるような虚と実の間の存在)」という概念の、「所有」を受け入れる新たな展開が試みられている。