EXHIBITIONS

3.11とアーティスト:10年目の想像

グランギニョル未来《グランギニョル未来2020》からの画像キャプチャ 2020 Courtesy of Don’t Follow the Wind

藤井光 タイトル未定 2020-21

高嶺格 ジャパン・シンドローム水戸編 2012

小森はるか+瀬尾夏美 二重のまち/交代地のうたを編む 2019 ©︎ Komori Haruka + Seo Natsumi

加茂昂 福島県双葉郡浪江町北井出付近にたたずむ 2019 撮影=加藤健

 東日本大震災から10年目となる2021年。2011年当時、水戸芸術館は自らも罹災し、臨時の避難所となった。その翌年に同館で展覧会「3.11とアーティスト:進行形の記録」を開催。震災を受けてアーティストが行った様々な活動を、芸術であるかそうでないかを問わず、時間軸に沿って紹介した。

 大規模な災害を経験したばかりの頃、アートの意味や役割が問い直されるなかでアーティストの多くは、支援と記録を主眼に置いていた。いまになって、アーティストたちは「作品」を通じ、10年前の厄災に応答している。

 ものごとを想像する/させることは、芸術の重要な役割のひとつ。本展は、その芸術の本質に改めて着目し、東日本大震災という厄災と私たちをつなぎ直し、2011年の記憶を後世へと語り継ごうとする作品群を紹介する。

 参加作家は、加茂昂、小森はるか+瀬尾夏美、佐竹真紀子、高嶺格、ニシコ、藤井光、Don’t Follow the Windの7組。被災地に通い続けたアーティストが現地で見た風景や聴いた言葉を、絵やテキスト、映像などで表した作品を展示し、10年間という年月の経過、そのなかにおける変化と不変を見つめる。

 出展作家のひとり、藤井光は、東日本大震災の禍根をいかに表現するかを探求する過程で、いじめや差別が要因である、福島の人たちの「心の問題」に直面した。本展では県内の教育者の協力を得て、「差別」について考えた新作を発表。放射性物質という「未知のもの」が芽生えさせる根拠のない差別意識を「Black Lives Matter」に重ね合わせ、アメリカ人牧師が1960年代に行った伝説の授業を「3.11後版」に書き換えて、日本の小学生たちと再演する。

 そして会場では、東日本大震災にまつわる「忘れられない」「忘れたくない」「覚えていたい」出来事を綴った手記『10年目の手記』を公開。展覧会を訪れた一人ひとりが自ら語り手となって、手記やコメントを残す場を設ける。