EXHIBITIONS

東山魁夷と四季の日本画

2020.11.21 - 2021.01.24

東山魁夷 満ち来る潮 1970(昭和45) 山種美術館蔵

東山魁夷 緑潤う 1976(昭和51) 山種美術館蔵

東山魁夷 年暮る 1968(昭和43) 山種美術館蔵

山口蓬春 新宮殿杉戸楓 4分の1 下絵 1967(昭和42) 山種美術館蔵 ©︎ 公益財団法人 JR 東海生涯学習財団

結城素明 春山晴靄・夏渓欲雨・秋嶺帰雲・冬海雪霽 1940(昭和15)頃 山種美術館蔵

 山種美術館で、日本画家・東山魁夷を中心に、近代・現代の画家たちが描いた作品を展示する特別展「東山魁夷と四季の日本画」が開催される。

 日本や世界各地の風景を詩情豊かに描き、昭和の国民的画家と謳われた東山魁夷(1908〜1999)。1908(明治41)年、横浜に生まれた東山は、東京美術学校で日本画を学んだ後、ドイツに留学し、戦前・戦時中の苦難の時代を経て、戦後は風景画家として活躍した。静謐で叙情性あふれる作品は、平成から令和の世へと移り変わりゆくなかでも人々の心を魅了し続けており、近年も大規模な回顧展が続いている。

 本展では、東山の芸術を構成する要素のうち「四季」と「風景」をテーマに作品を紹介。戦後、東山が新たな風景画を求めた北欧滞在を経て、東山の日本の伝統美への回帰にいたる時期に焦点を当て、当時を代表する珠玉の優品を展示する。

 なかでも見どころとなるのは、東山が手がけた横幅9メートルの作品《満ち来る潮》。山崎種二(山種美術館・初代館長)が皇居宮殿を飾る東山の壁画を見た時、広く人々が鑑賞することができるようにと同趣の作品の制作を依頼した《満ち来る潮》は、日本の海のイメージと日本絵画の装飾性が凝縮され、日本美への回帰を象徴する作品となっている。

 また、同時期に制作された《年暮る》をはじめとする「京洛四季」の連作のうち4点を約4年ぶりに一挙展示。作家・川端康成の言葉をきっかけに着手されたもので、古都の風情と繊細な季節のうつろいが見事なまでに表現されている。

 さらに本展では、「京洛四季」のように、日本の四季をひと揃えに描く伝統的な主題表現や、春夏秋冬折々の表情をとらえた風景表現にも着目。東山の師・川合玉堂や結城素明、東京美術学校の同窓生である山田申吾や加藤栄三、そして皇居宮殿の装飾をともに手がけた山口蓬春や杉山寧をはじめとする近代・現代の画家の優品も展示する。

 近代・現代の名だたる画家たちが四季を描いた優品の数々が揃う本展を通じて、日本人が自然と向き合い培ってきた季節への鋭敏な意識を感じ取りたい。