近代と現代の日本画を中心としたコレクションを持つ東京・広尾の山種美術館で、竹内栖鳳をはじめとする近代・現代の日本画家が手がけた動物の表現を堪能できる展覧会「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」が開催される。同展は新型コロナウイルスの影響により延期されていたが、新たな会期は9月19日〜11月15日となった。また、併設展示としてローマ教皇献呈画の守屋多々志《西教伝来絵巻》試作も特別公開される。
近代京都画壇を牽引した日本画家・竹内栖鳳は、生涯で数多くの動物を描き、卓越した描写力により動物画の名手として高く評価された。とくに重要文化財となっている《班猫》(1924)は、栖鳳の代表作であるとともに、近代日本画における動物画の傑作として知らている。静岡県の沼津で偶然出会った猫に魅せられた栖鳳は、この猫を丹念に観察、写生して同作を完成させた。同展ではこの《班猫》を約4年ぶりに特別公開。栖鳳が動物を描いた絵画17点を一挙に紹介する。
ほかにも、凛とした猫の姿をとらえた小林古径の《猫》(1946)、写実と装飾性を融合し蛾と蜘蛛を描いた速水御舟の《昆虫二題》(1926)、ユーモラスな表情の蛙を描いた柴田是真《墨林筆哥》(1877〜88)など、様々な生き物の表現が紹介される。
さらに、栖鳳に学んだ西村五雲、西山翠嶂、橋本関雪や、上村松篁、竹内浩一など動物表現を得意とする京都の画家、さらに奥村土牛ら東京画壇の画家たちによる、個性豊かな動物画の優品も一堂に展示。愛らしい犬や猫から、勇壮な馬や牛まで、日本画に描かれた生き物たちへのあたたかなまなざしが感じられる展覧会となっている。
また、同展会期中の併設展示として、昭和から平成にかけて活躍した歴史画の第一人者、守屋多々志による《西教伝来絵巻》試作も特別に公開。同作は2019年11月のローマ教皇の来日を記念してヴァチカンに献呈されるもので、日本で公開される最初で最後の展示となる。