EXHIBITIONS

ジャン=ミシェル・オトニエル「夢路」

2020.09.16 - 11.07

ジャン=ミシェル・オトニエル Kiku - Ōtaniro(Earthen yellow-red-brown) 2020 Photo by Claire Dorn © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Courtesy of the artist and Perrotin

ジャン=ミシェル・オトニエル Kiku - Hiwamoegiiro(Siskin sprout yellow) 2019 Photo by Claire Dorn © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Courtesy of the artist and Perrotin

ジャン=ミシェル・オトニエル Kiku - Hiwamoegiiro(Siskin sprout yellow) 2019 Photo by Claire Dorn © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Courtesy of the artist and Perrotin

ジャン=ミシェル・オトニエル Kiku - Kokushokuiro(black) Photo by Claire Dorn © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Courtesy of the artist and Perrotin

ジャン=ミシェル・オトニエル Kiku - Kakitsubatairo(Rabbit-ear iris color) 2020 Photo by Claire Dorn © Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Courtesy of the artist and Perrotin

 フランス出身のアーティスト、ジャン=ミシェル・オトニエルの新作個展がペロタン東京で開催されている。

 オトニエルは1964年フランス・サン=テティエンヌ生まれ。現在、パリ在住。80年代後半より、ドローイング、彫刻作品、インスタレーション、写真、執筆、パフォーマンスと多様な制作を続けてきた。当初は硫黄や蝋など、可逆性のある素材の探索に始まり、93年からはガラスを用いた作品を発表。近年、その作品は建築的な側面をも兼ね備え、世界各地の公的・私的なコミッションを通して庭園や史跡の一部となっている。

 作家にとって日本のギャラリーでの初めて個展となる本展では、静観的なアプローチで自然の探究を続けるオトニエルが、抽象的で五感に訴えかけるインスタレーションを展開する。

 新シリーズのガラス・ビーズによる立体作品《Kiku》は、菊花や、不老長寿という日本の古典文化における菊の象徴的意味からインスピレーションを得たもの。形状は有機的かつ曖昧で、植物と《結び目》の中間にあり、愛や、日本文化における《結び》の伝統美を参考にしている。

 また同じタイトルを冠した大型の絵画作品では、白金箔の層のうえに黒インクで花の影のような抽象的なイメージを描き、暗く抽象的なカリグラフィーが見る者を純粋な抽象と熟考の世界へと誘う。絵画作品《Kiku》は、オトニエルが作家活動開始当初より実践の中核とし続ける「ドローイングへの愛情」を示し表す作品ともなっている。

 ギャラリーのメインスペースには立体作品《Kiku》が尊く神聖な護符として、カリグラフィーの絵画が聖像として展示されるインスタレーションは、オトニエルが繰り返し訪問した「文京菊まつり」を想起させる。このインスタレーションに「夢をみる」「愛する人と夢で逢う」という二重の意味がある「夢路」と名づけることで、ロマンチックな世界観を覗かせるとともに、感情への鍵となるのは花のような素朴なものであることや、それが空想と想像への「夢の路」であることを指し示す。