EXHIBITIONS

食の器

2019.06.25 - 09.01

独楽盆 江戸時代 19世紀 「食卓の器 柳家使用品を中心に」より

染付八橋文蓋付碗 伊万里 江戸時代 18世紀 「食卓の器 柳家使用品を中心に」より

織部幾何文筒向付 美濃 江戸時代 17世紀 「茶の湯と懐石の器」より

 日々の食事で用いる食器は、その誕生から現在に至るまで、人々にとってもっとも身近な生活工芸のひとつ。日本民藝館の創設者・柳宗悦は、食器のように生活に根ざした、実用のためにつくる雑器にこそ美が宿るという逆説的な美意識を提示したことで知られている。

「生活と美の結合」を目指した柳は、それまで注視されてこなかった「手廻りもの」「普段使い」「勝手道具」などと呼ばれていた雑器に見られる美を具体的に示すために、しばしば皿や碗(椀)、盆などの食の器を取り上げて著書などで紹介。現代の器の手本とすべく集められたそれらの食器の数々は、日本民藝館のコレクションの主軸を占めている。

 また柳は、普段使用する食器にも自らの美意識に沿った器を使った。柳の妻で声楽家の兼子や息子たちの回想によると、自宅(現・日本民藝館西館)の台所で使っていた食器が、いつのまにか向かいの日本民藝館の陳列ケースに飾られていることがあったという。さらに、盟友で陶芸家の河井寛次郎や濱田庄司ら、現在での近代工芸の巨匠たちの作品も、柳は平常の器として使いこなしていた。

 本展では、日本民藝館コレクションの「食の器」に着目。江戸時代のもてなしや年中行事で使用された「晴(ハレ)の器」、柳の工芸論の形成に大きく影響したわび茶の系譜につらなる「茶の湯と懐石の器」、そして柳が日常生活で使用した食器を軸に展観する。

 もっとも身近な工芸品と言える「食の器」とはどのようにあるべきかを再考するきっかけとなるだろう。